本研究では、中規模地方自治体である松本市・韓国の全羅北道・金沢市・飯田市の外国籍住民や多文化共生関係者にインタビューを行い、中規模地方自治体に共通する多文化共生面での問題を明らかにし、松本市の施策改善につなげようと試みた。 まず2014年に松本市役所と連携し26名の外国籍住民を対象にインタビュー調査を行った。それにより、「話す」「聞く」技能では中級と自覚する者が多いこと、学習ニーズが大きいが現実の学習はしていないこと、「定住・永住者」は勤務場所で日本人同僚から日本語を学ぶ機会が多いことなどの結果が得られた。 次に、2015年に韓国で8名にインタビューし、多文化共生の法制度と課題、韓国語教育の仕組、韓国人の移民受入意識等についての情報を得た。金沢市(4名)および飯田市(5名)の調査では、各地域で異なる多文化共生施策方針、インバウンドと在住外国人の関係、自治体職員とキーパーソンの連携と活用等が分かった。 結果、以下5点の提言を行った。1.外国籍住民と日本人がゆるやかな交流ができる「場」の創造。2.中規模ならではのキーパーソンの活用と行政をからめたネットワーク化。3.ボランティアの高齢化と人手不足、さらにJLPT対策要求など日本語ボランティア教室の変化とそれへの行政の対応。4.中規模地方自治体での戦略的な多文化共生専門職員の養成。5.多文化共生に関わる基本法の整備である。これら提言のうち数点は『第2次松本市多文化共生推進プラン』(2016)に反映され、松本市の多文化共生状況改善のために機能しつつある。 2017年に上記成果を論文として投稿したが不採択だったため、現在他の論集に投稿準備中である。なお、冊子としてまとめた報告書を2月に複数の研究者および自治体に送付した。また、同月、松本市中央公民館で岩手大・新潟大の研究者等をパネラーとして招聘し、行政関係者等と討議するシンポジウムを開催した。
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