研究課題/領域番号 |
26370604
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鹿島 央 名古屋大学, 国際教育交流本部, 教授 (60204377)
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研究分担者 |
橋本 慎吾 岐阜大学, 留学生センター, 准教授 (20293582)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発話文 / リズム / リズムユニット / リズム型 / 持続時間 / 呼気流量 / 日本語母語話者 |
研究実績の概要 |
発話文でのリズム解明のため、各リズムユニットに持続時間と呼気流量がどのように配分されるかを単独発話とフレーム文中の語を対象に分析した。資料語は、5拍語の3つのリズム型である221型(16語)、122型(9語)、212型(8語)の合計33語である。母音は/a/、子音はすべて/t/である。これらの語を単独とフレーム文「これは(資料語)です。」に入れ、それぞれ10回の発話を収録した。調査協力者は日本語母語話者(男)1名である。分析の結果、持続時間と呼気流量の実測値と割合が発話環境(単独、フレーム文)によりどのように異なるかが明らかとなった。まず、語の全体長は、発話環境により異なり、フレーム文中の持続時間は単独発話にくらべて60%程度、呼気の総流量は70%程度であり、持続時間の方が減少の程度は大きいことが分かった。二番目に、各語のユニット1「た」は、発話環境と前後のユニット環境により持続時間、呼気流量が異なる傾向を示した。第1ユニットと第2ユニットの「た」では、単独発話でもフレーム文中でも、第1ユニットが流量の実測値も割合も多かったが、フレーム文中についてはほぼ同じ実測値となっている。最後に、ユニット2では、同じユニット2でも「たー」「たっ」「たん」では、発話環境によらず221型の第2ユニットに生起する場合に持続時間の実測値が最小であったが、割合はフレーム文中では、同じような割合であった。流量は、単独発話では221型の第2ユニットは少ないが、フレーム文中では122型の第2ユニットも少なかった。ただし、ユニット2それぞれがフレーム文中の第1ユニットあるいは第2ユニットに生起する場合には値が同じような傾向であった。このことから、ユニット1「た」と同様に、フレーム文中での流量が実測値でコントロールされていることが示唆される結果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発話文レベルでのリズム現象を、リズムユニットの配置特徴として捉え、持続時間と呼気流量が各ユニットへどのように配分されているのかを分析することが研究の目的である。このことにより、呼気のコントロールの仕方がリズム現象とどのように関わっているのかが解明できると考えている。今年度の結果では、日本語母語話者についてはフレーム文中での呼気の実測値がユニットによっては同じような数値となっていることから、単独発話では観察されなかった呼気のコントロールの様子が明らかになった。ただ、年度後半で予定していた学習者の収録が遅れてしまっている。これは、分析に適した学習レベルの被験者(男性、米語話者、初級から中級程度)がみつからなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
持続時間、呼気流量それぞれの配分がリズムユニットに対してどのようになされているか、単独発話およびフレーム文中の語を対象として分析したが、このことにより、発話文レベルでのリズム解明の基礎的な資料になることが期待される。しかしながら、被験者も少なくこの結果が妥当であることを検証するためには、さらに日本語話者を増やす必要がある。資料語についても、5拍語を対象としたが、破裂音のみであることもさらなる検討が必要である。今年度以降は、学習者(英語話者、スペイン語話者)を中心に、以上のような分析を重ね、リズム類型の異なる学習者の発話文レベルのリズム解明を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、呼気圧、呼気流量を測定するためにフェイスマスクというプラスチック製のマスクを使用するが、その製造元であるアメリカの会社への発注依頼を再三にわたって行ってきた。現在のところ、回答がなく、そのための費用が残った形となっている。現在、他のルートからの依頼を試みているところである。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に使用するフェイスマスクを新たに購入し、実験を継続させる予定である。
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