本研究の目的は、日本語学習者の発話における語音の長さと呼気のコントロールがどのように関連しているのかを明らかにすることである。日本語では、語音の長さはリズム現象と密接に関わっていると考え、これまで仮定されてきたモーラによるリズム形成ではなく、リズムユニットという単位による長さの配置特徴としてリズムを分析してきた。呼気との関連では、生理的な変数である呼気の総流量が各リズムユニットにどのように配分されているか、ユニット毎の持続時間との関係を分析することで検討してきた。資料語は、5拍の無意味語で、122型(例:たたーたん)9語、212型(例:たんたたん)8語、221型(例:たーたんた)16語とそれらを含む発話文である。27年度は、日本語話者(NJ)2名と米語を母語とする日本語学習者(AEJ)の発話について分析を行い、本年度についても英語話者を分析する予定であったが、収録予定日に急なキャンセルがあり、他に収録条件に合う学習者がいなかったため実施できなかった。そのため、調査協力者として急遽、声調言語であるベトナム語話者を1名選び検討を行った。ベトナム語話者を選んだ理由は、発音指導を実施する中で発話の流暢さがリズムの実現という観点からこれまでになく不自然であったためである。結果については未だ分析中であるが、声調言語での呼気のコントロールの仕方は、日本語話者(NJ)と米語を母語とする日本語学習者(AEJ)とは聴覚印象としても大きく異なっている。
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