研究課題/領域番号 |
26370607
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大谷 晋也 大阪大学, 国際教育交流センター, 准教授 (50294137)
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研究分担者 |
スミス 朋子 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (50402988)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EPA看護師候補者 / 看護師国家試験 / 語彙データベース / オンライン語彙教材 / 日本語教材開発 |
研究実績の概要 |
2004年2月から2015年2月実施分まで、計12 年分の看護師国家試験の語彙を、教材開発の基礎となるよう設計してデータベース化を進めた。データベース化に際し、語彙の出現頻度だけではなく、語種・品詞・文法・造語力・コロケーション等にも着目して、教材開発の基盤となるよう工夫した。語種の面から、日本語の語彙は大まかに和語・漢語・外来語に分けられるが、看護師国家試験を分析すると、その数・出現頻度・品詞・文法・音韻・コロケーション・造語力等の面でそれぞれ鮮明な特徴を持ち合わせていることがわかった。 和語は、主に動詞・形容詞・副詞・接続詞・助詞として用いられていた。動詞・形容詞の場合は語尾変化を伴い、他の品詞の場合は文の構成を表す役割を担っているため、文法との関係が深いと言える。和語に関しては、日常生活と関連付けながら、基礎的語彙および文法を中心に学習する方法が効果的であると考えられる。 漢語は出題される名詞の大多数を占め、旧日本語能力試験の出題範囲を超えた高度に専門的な語彙も多く含んでいた。漢語の学習は困難だが、ある程度漢字が身につけば、字形から新出漢字の意味を推測したり、既知の漢字から未知の語彙の意味を推測したりすることも可能になる。データベース作成にあたり、単漢字からその漢字が出現する語彙カテゴリーにアクセスできるようにするなど工夫し、漢字習得と語彙習得が相乗的に進むように考慮した。 外来語も専門用語として多数使われているが、多くは漢語と結びついて混種語を形成している。外来語部分については、元の外国語(ほとんどは英語)が意味理解に直結するため、表記方法のルールを把握し元の外国語を導きだす能力を身につけることが重要である。また、外来語と結びつきやすい漢語を具体例をもとに集中的に学習したり、専門知識と関連付けて語彙カテゴリーを作成するなど、効率的な学習を進める方法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2004年2月から2015年2月実施分まで、計12 年分の看護師国家試験の語彙について、教材開発の基礎となるようデータベース化を行い、その過程で和語・漢語・外来語それぞれの特性を生かした教材作成の方向性を検討することもでき、当初の目的をほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
作成されたデータベースを元に、どのような教材が効率的な語彙学習に貢献するかを研究し、ペーパーベースの教材を開発する。 基本的な医学術語の多くは漢字熟語から構成されていて、その構成基幹となっている二漢字語の一部が高い造語力を持っているため、学習者がそのような漢字熟語を学ぶことによって学習効率が高まるという研究や、専門用語を、科学技術基礎用語・基礎医学系用語・臨床医学系用語・医療現場での接遇表現・医療日本事情等のように有機的にカテゴリー化し、カテゴリー毎に指導する方法の有効性を示した研究が存在する。 以上ような知見等を活用し、看護師国家試験に用いられる語彙の特性を再度検討しながら、二漢字語をキーワードとする基礎語彙データベースから作成した、造語力の高い二漢字語と、そこから派生する語彙カテゴリーを関連づけて学ぶなど、効率的な学習を可能にするペーパーベース教材の開発を計画している。そのような語彙カテゴリーを作ることによって、候補者たちが既に持っている看護の専門知識を、出題される漢字語彙と関連付けることもでき、語彙学習を促進する効果が期待できる。 ペーパー教材開発終了後、日本人看護学生と外国人看護師候補者の双方に実際に使用してもらい、学習の進め方や効果についてのフィードバックを得る予定である。候補者たちの場合、語彙学習の目標は国家試験問題を理解して正解を導くことであり、読解中心の教材とすることが相応しいと考えられる。国家試験(全240問)には状況設定問題が毎年60問出題されるため、教材には、語彙や文だけではなく文章形式の読解問題も取り入れる。さらに、語彙学習をより意識できるように、問題文からキーワードを抽出する習慣や、関連語彙を考えだす習慣も身につけられるように工夫する。 フィードバックが得られた後、本研究の締めくくりとして、オンライン語彙教材の設計・開発を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、研究分担者と研究協力者が使用するため、それぞれ1台ずつのノートパソコン購入を予定していたが、研究分担者の購入したタブレットPCが予定より低額であった。また、データベースソフトウェアは無償のものを利用でき、研究協力者の作業効率がよかったため、謝金も低額に抑えることができた。さらに、情報収集のための出張を予定していたが、時間が取れずに断念した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者の作業用に新たにノートパソコンを購入して効率化するとともに、研究協力者の作業時間を増やして研究の進展に努める。また、情報収集や調査のための出張を可能な限り行う予定である。
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