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2014 年度 実施状況報告書

コーパスを利用した日本語述語形式の発達に関する学習者言語研究と日本語教育への応用

研究課題

研究課題/領域番号 26370610
研究機関国際教養大学

研究代表者

堀内 仁(堀内仁)  国際教養大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40566634)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードコーパス / 学習者言語 / 日本語述語形式 / 第二言語発達
研究実績の概要

平成26年度の研究計画は「文献調査と通時コーパスを用いた検証」であった。当該年度は、学習者言語のうち、丁寧体動詞述語のパラダイム(肯定・否定、及び、過去・非過去形を含む)を対象として、共時コーパス(KYコーパス)と通時コーパス(C-JAS)を使ってその発達段階を調査した。その結果は、Horiuchi (2014a, b:平成26年度の研究成果欄を参照)という2つの査読論文(英語)として出版された。
上記2論文では、共時的・通時的コーパスといった異なる種類の学習者コーパスデータを用いたが、両者に共通して見られる学習者言語の特徴を明らかにし、その背後の要因を分析した。具体的には、「~ます、~ません、~ました、~ませんでした」という標準的なパラダイムの他に、学習者の母語によらず彼らの学習歴や習熟度が上がるにつれて、「(~する)です、(~しない)です、(~した)です、(~しなかった)です」のような「普通体+です」の形式のパラダイムを発達させるという興味深い事実が明らかになった。
上記のような新しい事実の発掘はもちろんのこと、上記2論文では、近年問題になっている日本語母語話者の否定丁寧体の分化(「~ません」系と「~ないです」系)との比較も行い、特にこれらに関する先行研究の成果を踏まえた分析を行っている。
以上が平成26年度の主な研究業績だが、一部研究計画を変更し、習得にも時間がかかり、且つ、今後このコーパス分析プロジェクトの進展に必要と思われる統計分析の基礎を学ぶため、関連するワークショップ、研究会、学会などに参加し、自らの研究能力を高める努力を行った。また、学習者コーパス分析の技術を高めるために、エディタを使ったテキストデータの処理、形態素解析、Excelを使ったデータ処理などについても学んでいる。更に、コーパス分析技術と表裏の関係にあるコーパス開発の技術についても学習中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要でも述べたが、平成26年度の研究計画は、丁寧体動詞述語に関して言えば、ほぼ達成できたのではないかと思う。
ただ、学習者言語の発達に関する文献調査を後回しにし、統計分析やコーパスデータ処理技術等のコーパス分析手法の基盤に関する学習を優先した点や、通時的コーパスだけではなく共時的コーパスを用いた分析を行った点に関して言えば、計画を一部変更したと言える。
しかし、この優先した部分は今年度以降どの道必要な過程であり、文献調査という計画の一部を後回しにした分、共時的コーパスの分析といった今年度以降の計画の一部を先取りしたとも言える。また、コーパス調査の精度を高めるのに必要な統計分析や、母語話者コーパスの代表である「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(BCCWJ)のデータ検索ツール「中納言」やExcelを使ったコーパスデータ分析技術の習得は順調に行ってきた。

今後の研究の推進方策

平成27年度の研究計画は「共時コーパスを用いた検証」、平成28年度の研究計画は「母語話者コーパスを用いた対照中間言語分析」となっているが、「研究実績の概要」「現在までの達成度」の項で述べたように、研究計画の一部が遅れていたり先取りされていたりするため、当初の年次計画を縦割りに再構成する。つまり、「通時コーパス」「共時コーパス」「母語話者コーパス」を各年次に分けて分析しようと計画していたが、これら全ての基礎調査を平成27年度も平成28年度も継続的に行う。但し、調査対象となる日本語述語形式を網羅的にではなく限定して調査を行い、「対照中間分析」や本格的な統計分析に関しては、平成28年度の主要課題とする。具体的には、以下の方針で今年度の研究を推進する予定である。
1)まず、遅れている学習者言語の発達に関する第2言語習得論研究の主要文献の調査を行い、従来提案されてきた主要な仮説についてまとめる。また、同仮説群の検証のために調査が必要な日本語述語形式を確定する。2)上記の結果確定した述語形式のうち主要なものから、通時・共時学習者コーパス(話し言葉・書き言葉)それぞれを用いた調査・分析を行う。3)また、2)と並行して、国立国語研究所の「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(BCCWJ)等を用いて同じ述語形式の頻度調査を行う。
とりわけ、否定述語の発達に関する研究は日本語に関してもいくつかの重要な研究(Kanagy 1994、家村2003など)が行われており、平成26年度にはその一部である動詞否定丁寧形の発達に関して既に調査を行ったので、動詞否定普通形や、名詞+コピュラ「だ」、及び、形容詞述語の否定丁寧形・否定普通形の発達等から調査を始めることができると思われる。

次年度使用額が生じた理由

物品購入の際、予想以上に安価な物を入手できたことによる。

次年度使用額の使用計画

物品購入の際に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] A corpus-based analysis of the paradigmatic development of semi-polite verbs in Chinese and Korean learners of Japanese2014

    • 著者名/発表者名
      Horiuchi, Hitoshi
    • 雑誌名

      Journal of Japanese Linguistics

      巻: 30 ページ: 55-75

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] A corpus-based analysis of non-standard polite forms of verbs in English, Chinese, and Korean learners of Japanese2014

    • 著者名/発表者名
      Horiuchi, Hitoshi
    • 雑誌名

      Akita International University Global Review

      巻: 6 ページ: 78-107

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

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公開日: 2016-05-27  

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