研究実績の概要 |
Beglar, Hunt, & Kite (2012) は、日本の大学における英語学習者を対象に多読授業を実施し、得られた結果から「読めば読むほど読みの速度が上がる」と結論づけた。しかしながら、彼らの結果は、「もともと速く読める人ほど多く読め、その結果、多く読んだ人の読みの速度もさらに増加する」という解釈も可能である(稲垣・稲垣 2013)。本研究の目的は、この2つの解釈のうちどちらが正しいのかを検証することである。 平成2 6年度は、プリテストとポストテストに使用する読みの速度を測るテストの開発を行った。先行研究(Beglar, Hunt, & Kite 2012)で用いられた400語からなる読み物( (Mikulecky & Jefferies, 1998)を基にテストを作成し、それを英語授業の一環として実施し、必要な修正を加えた。このテストの難易度は中上級レベルのグレイディッド・リーダーズ(OxfordのLevel 4)と同程度である。読み物はプリントの片面に印刷され、その裏に内容に関する8つの質問が4つの選択肢とともに提示される。被験者は読み物を読み終えると、ホワイトボード上に提示される読み時間を記録し、すぐに裏の質問に答える。質問に答えるために表のテキストを見返すことは許されない。なお、内容に関する質問は、被験者が内容を理解しながら読んでいることをチェックするためのものである。このテストを学期の始めと終わりに実施することにより、多読による読みの速度の伸長が測定できる。 平成27年度は、完成した読みの速度を測るテストを用いて予備調査を行う予定であったが、研究分担者の稲垣俊史が、平成28年度より同志社大学へ転出することとなり、名古屋大学での後始末で超多忙となり、実施できなかった。今年度は、大阪府立大学と同志社大学において予備調査を行う予定である。
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