研究課題/領域番号 |
26370636
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
河野 円 明治大学, 総合数理学部, 教授 (20328925)
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研究分担者 |
岡 秀夫 目白大学, 外国語学部, 教授 (90091389)
平井 清子 北里大学, 一般教育部, 教授 (60306652)
鈴木 広子 東海大学, 教育研究所, 教授 (50191789)
臼井 芳子 獨協大学, 国際言語文化学部, 准教授 (40296794)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英語教育(高校) / PISA型リテラシー / リーディング活動 / 教科書分析 / 思考力 / 認知レベルのタキソノミー / 発問とタスク |
研究実績の概要 |
1.理論研究:まず、3年間の研究の土台として、PISA型読解力の枠組みやその問題例に関する文献研究の3年計画および担当者を決め、初年度の研究を行った。また国内外のCLILやCBI、およびそれらのカリキュラムに関して調査した。その中で、リーディング活動の指導面で「足場がけ」をして質問の難易度を上げていく点にポイントがあることが明らかになり、その理論や方法についてさらに掘り下げて検討した。 2.教科書分析:過去3年間に行ってきた中学校検定英語教科書における発問分析研究について、調査結果を集計し、理論的観点、教育実践的観点より総括を行った。その知見をもとに高等学校新課程のコミュニケーション英語 I の検定教科書に含まれる発問とタスクをアンダーソンのタキソノミーを用いて分析した。台湾の高等学校英語教科書や国際バカロレアの教材研究にも着手をした。 3.授業観察:コミュニケーション英語 IやIIを実際に使用している高等学校を訪問し、授業参観を行った。教科書使用に焦点を置いて授業の流れを記録し、その後、担当の先生方と面談し、さらに具体的な状況・問題点などを明らかにした。一方、基礎能力において他教科でPISA型リテラシー育成に寄与する要素があるのかを分析するため、中学校の社会科および英語の授業から、談話分析を目的としたデータ収集を行った。 4.結果の公表:中学校検定英語教科書研究のまとめをAILA World Congress 2014にて発表し、さらにJACET Summer Seminarでその結果について参加者と意見交換を行った。高校の教科書分析については言語教育エキスポ2015にて進捗状況を報告した。また、研究に関するウエブサイトを立ち上げ(http://www.kisc.meiji.ac.jp/~mkawano)、研究の目的や進行状況、研究打ち合わせ日程等について公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は第二言語におけるPISA型リテラシー育成のため、中等教育ではどのような英語教育を行ったらよいのか、を具体的に可視化することを目的としたものである。1年目は、文献研究、教科書分析、および授業観察のそれぞれの分野でおおよそ予定通りの進行状況であった。 1.理論研究:文献研究については、研究メンバーそれぞれが3か年の基礎となる調査を研究メンバーそれぞれが行うことができた。CALPの発達や英語教育におけるCALPのとらえ方についてまとめ、英語教育における言語力の再定義を社会言語学的観点からも行ったことは、大きな成果であると言える。 2.教科書分析:研究代表者・研究分担者が所属するJACETバイリンガリズム研究会の多くのメンバーの協力を得て、コミュニケーション英語I に含まれる発問やタスクの分析を終了することができた。なお、中学校との比較をねらいとするために分析ツールはアンダーソンのタキソノミーを用いて発問やタスクを認知負荷の観点から分類し、その結果を研究メンバーで討議した。その際に、実際の授業運営における要因や学習指導要領の中での位置づけなどを明らかにする必要性が指摘された。そこで、教科書の各課の流れや構成を分析したところ、各教科書にはレッスン単位で発問やタスクの形式とそれらの認知レベルに固定的なパターンがあることが明らかになった。新たな分析方法を追加したことにより、当初の予定より時間がかかったが、発問やタスクを孤立した事象としてとらえるのではなく、より広くかつ深い観点からその背景や効果を含めて検証することができた。そのためにコミュニケーション英語以外の教科書分析は平成27年度になっての研究となるが、これまでの蓄積をもとに迅速に遂行できる見込みである。 3.授業観察:おおむね予定通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
理論研究、教科書分析、および授業観察の3点から、以下のように計画している。 1. 理論研究:引き続きPISAの読解力フレームワークやアンダーソンのタキソノミー、CLILや国際バカロレア等のプログラム、および言語と認知発達に関する文献調査を行う予定であるが、特にフレームワーク相互の関連性や日本での文脈化について検討を行いたい。また実際の授業観察のために談話分析や授業内インタラクションの観察と分析、学習者の言語や認知発達に関する最新の情報収集もあわせて行う予定である。 2. 教科書分析:高校では「コミュニケーション英語」に加えて「英語表現」を履修させる学校が多い。そこで「英語表現」の教科書分析を行い、高校の教育現場における全体像を可視化していく。分析にあたっては、複数のフレームワークを用いて多面的な分析を行う予定である。また、海外の教科書分析も継続し、日本の検定教科書との比較も行う予定である。 3. 授業観察:実際の授業訪問により、教科書の使用や思考力を養成する要素について分析を行う。また、高校の先生方と面談を行い、あわせて生徒の反応や発言を観察し、それらのデータの収集、記録、分析を行う。さらにフィンランドやオーストリア、台湾などの国外の中等教育や国内で国際バカロレアプログラムの視察を予定している。 以上の3分野で質的および全体的(教室内談話全体の流れの中での位置づけ)な観点からの分析をすすめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者のお二人が、海外の学校訪問の予定を校務の都合等で延期せざるを得ない状況であったことが主な理由である。お一人は学校訪問を予定していた2月と3月に、勤務校より海外研修の学生引率を命じられたため、学校訪問を延期せざるを得なくなった。もう一人の研究分担者は大学のオフィス移転に伴い、研究時間や勤務体制が大幅に変更になった。それに伴い、予定していたフィンランドの学校訪問が延期となった。
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次年度使用額の使用計画 |
延期となった海外の学校訪問の旅費として使用予定である。具体的には台湾やフィンランド、オーストリア等の学校を訪問し、授業観察や関係者のインタビューを行い記録する活動に使用する計画である。
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