平成23年度に発表された『国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策』(文部科学省)では,各中学校・高校において,学習の到達目標をCAN-DOリストの形で設定することを求めている。このような取り組みは歓迎されるべきであるが,課題もある。CEFRでは,私的,公的,職業,教育の4つの領域を想定し,CAN-DOリストを作成しているが,教育領域に係るCAN-DOリストが他の3つの領域に比べて圧倒的に少ないことから,CEFRのCAN-DOリストを学校教育に取り入れにくくなっている。特に,CEFRでは,B1以下のレベルにおいて,学校の授業でよく行われているCALP(Cognitive Academic Language Proficiency)の育成に関連した言語活動が乏しい。 そこで,本研究では,昨年度までは,以下のことを行った。(1)現在のCEFRにはない,A1,A2,B1レベルにおいてCALPを育てるためのディスリプターを検討し,それらを取り入れたCAN-DOリストを作成した。新しく取り入れたディスクリプターについては,その妥当性を検証した。(2) (1)でできたCAN-DOリストにある言語活動を支援する学習ストラテジーを組み入れたCAN-DOストラテジーリストを作成した。このリストには,言語を使って何ができるかというディスクリプターとともに,そのディスクリプターが示す言語活動を支援する学習ストラテジーを組み入れ,CAN-DOストラテジーリストを策定した。 昨年度は,策定したCAN-DOストラテジーリストに基づいた,授業で行う指導例を開発する。CEFRには,インタラクション,スピーキング,リスニング,リーディング,ライティングという5つのスキルにおいて,それぞれ6つのレベルがあるが,それぞれのスキル,それぞれのレベルにおいて教室内で実行可能な指導例を作成した。
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