研究課題/領域番号 |
26370646
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
藤原 三枝子 甲南大学, 国際言語文化センター, 教授 (50309415)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドイツ語教材 / ドイツ語学習動機づけ / 自己決定理論 / ドイツ語学習者の学習観 / ドイツ語教師研究 / ドイツ語教師の授業観 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本のドイツ語教育においても使用が増えているコミュニカティブ・アプローチに基づく教材と、学習者の動機づけと学習観、および教師の授業観との関連性をテーマとしている。平成26年度は、平成27年度の本調査に向けてのパイロット調査の年と位置づけ、学習者調査については、心理学の包括的な理論で、これまでの調査研究(平成22年、24年、25年)でドイツ語学習にも適用可能であることが検証された「自己決定理論」に基づく項目を主内容とする質問紙調査を、ドイツ語学習者211名を対象に実施した。第1回目調査(7月)の分析結果を踏まえて、第2回目調査(平成27年1月)では、改善した質問紙で調査を行った。加えて、17名の学習者に、教科書の使用についてインタヴュー調査(平成27年1月~2月)を実施した。 教師対象の調査については、学習者対象の質問項目および外国語教師に関する先行研究で使用されている項目を土台として作成した質問紙を使用し、60名のドイツ語教員の協力を得えて、パイロット調査(7月)を実施した。また、連携研究者森田昌美が、関東、関西のドイツ語教員合計4名の授業参観、授業参観対象教員4名を含む6名に対してインタヴュー調査を実施した。 上記の調査を基に、平成27年度の調査に使用する質問紙を作成し、調査対象の4種類の教材(Menschen A1, Schritte international / Schritte plus A1, Szenen 1, Start frei! / Start frei! Neu)を使用予定の先生方に調査の協力を依頼し、本調査に向けて準備を行った。 同時に、日本におけるドイツ語教材の発展傾向に関する分析、加えて、コミュニカティブな授業において重要な役割を果たす授業の作業形態について、連携研究者とともにアクションリサーチを行い、口頭および論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画において、平成26年度は、平成27年度の本調査に向けての「パイロット調査の年」と位置づけた。その計画に基づき、平成26年度は、質問紙の改善を目的として、学習者211名を対象として、質問紙調査を実施し、質問紙の改善を行った。また、学習者へのインタヴュー調査に関しても、合計17名の学習者を対象として、教科書のコンセプトに対する認知を柱とする聞き取りを行い、平成27年度の本調査におけるインタビュー調査のための基礎データとした。 教師対象の調査については、学習者対象の質問項目、および教師研究に関する先行研究で使用されている項目を土台として作成した質問紙調査に際し、60名のドイツ語教員からパイロット調査への協力を得た。対象者からのフィードバックを基に、本調査に向けて質問紙の改善を行った。また、連携研究者森田昌美が、関東、関西の4名の教師を訪ねて授業参観とインタヴューを行い、加えて平成27年度の授業参観に先立ち、さらに2名の教師にインタヴュー調査を実施した。 上記の手続きによって、平成27年度の本調査のための質問紙の整備をし、調査対象としている4種類の教科書を使用する予定である教員に対して、本調査への協力を依頼した。6月から7月の本調査実施に向けて、5月上旬までに、協力教員と学習者が確定する見込みである。また、日本のドイツ語教科書の発展傾向の分析およびコミュニカティブな授業において重要な役割を果たす授業の作業形態について、アクションリサーチを行い、口頭および論文として発表した。以上の理由から、調査はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本調査の年である。平成26年度のパイロット調査を経て修正した質問紙を使用し、6月~7月に第一回目調査、12月~1月に第二回目調査を実施する。調査対象は、コミュニカティブ・アプローチに基づいて作成された教科書 (ドイツ出版:Schritte international / Schritte plus A1、および Menschen A1、日本出版:Szenen 1 および Start frei! / Start frei! Neu)を使用しているクラスの教師と学習者である。第一回目調査のデータは9月中旬までに入力・分析を行う。第二回目調査のデータは2月末までに入力を済ませ、両調査を統合しての分析を行う。学習者に対するインタヴュー調査は1月末~2月末に行う。 教師の研究として行う授業参観およびインタビュー調査は随時、連携研究者森田昌美が担当し分析を行う。 研究成果の公表については、平成27年5月に、連携研究者森田昌美がJALT(全国語学教育学会)の分野別研究部会(神戸市外国語大学)において、授業の作業形態に関するアクションリサーチの結果発表を行う。調査研究のデザインに関しては、研究代表者が平成27年10月に、ドイツのLudwigsburg教育大学で行われるDGFF (Deutsche Gesellschaft fuer Fremdsprachenforschung) でポスター発表を予定している。質問紙による量的研究およびインタヴュー等による質的研究の分析結果は、平成28年度に国内外の学会で口頭発表を行うことを目指す。国外では、DGFFやFaDaF (Fachverband fuer Deutsch als Fremdsprache)での口頭発表、国内では、日本独文学会秋季研究発表会等での発表を目指す。国内外の学会誌・学術専門誌への投稿も積極的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施したパイロット調査1回目のデータ入力は、研究代表者と連携研究者とで行ったこと、当該年度は、海外への学会出張を行わなかったこと、SPSSなどの統計ソフトは、旧バージョンを使用したことが、支出が予定よりも少なかった主な理由であった。 また、当該年度のパイロット調査の経験から、平成27年の本調査では、質問紙のレイアウトならびに印刷、発送および受取、データ入力(自由記述部分を含む)を、リサーチ専門の業者に委託することとしたために、その費用を確保する必要があると判断したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は本調査の年と位置付けている。質問紙については2回の大規模調査(6月~7月および12月~1月)になるために、質問紙のレイアウトや印刷、および発送やデータ入力(自由記述部分を含む)を、リサーチ専門の業者に委託する。この費用に60万円余りを見込んでいる。 昨年度は学習者へのインタビュー調査の正確な文字起こしは行わなかったが、本年度の調査(20名程度)においては、より精密な分析を目的として、正確な文字起こしを行う。そのための費用に10万円程度はかかるものと思われる。 今年度は、学会関連で2回の渡独を予定している:発表1回(10月)と学会参加1回(3月)。このために、「旅費」関連費用として計画段階で当該年度に予定していた以上の支出を見込んでいる。
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