研究実績の概要 |
本研究は、英語多読プログラムの成果向上をめざして、形成的評価システムの構築と検証を行うことが目的であった。学習期間中に継続的に複数の指標を積み重ねてゆく形成的評価は自律的学習を促進する意味もあり、英語多読において重要である。研究は (1) 評価可能な指標の検討、(2) 評価項目および技法の決定、(3) 評価指標の検証の三段階を経て、英語多読プログラムのための形成的評価システムの提案することを目標とした。 当初、本研究は大学生による英語多読の長期継続を視野に入れていたが、研究期間2年目で研究代表者の所属研究機関が変更となり、調整を余儀なくされた。具体的には英語多読環境を新たに整える必要があり、さらに、半年の一学期のみの英語授業について調査対象を限定することとした。そのために、研究期間を1年延長した。英語多読用図書の整備に加えて、教育・学習環境も大きく変わったが、学生のスマートフォンを活用した形成的評価指標を検討することで、本研究に新しい視点を加えることができた。またイギリス・アメリカでのノンフィクション系レベル別学習図書の出版の急増を背景に、保健医療系を専門とする学生への英語多読についての検証も行った。 具体的な指標としては、読了語数、読了冊数、読書スピード、語彙サイズテスト等を用いた。語彙サイズテストについては一定数の語彙サイズが無い場合、多読当初は他の学生よりも丁寧な読み方が必要という示唆が得られ、基本語彙を身に付けていることが大学生での英語多読には重要と思われる。読書スピードは個人差が大きく、また英文パッセージの難易度・長さにより大きく変化し、英語多読の評価指標としては適切か疑問が出た。 本研究期間では特に学生スマートフォンの活用およびノンフィクション系洋書についてまとめ、国際学会(TESOL, ERWC4)などで発表した。
|