研究課題/領域番号 |
26370658
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 健 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402242)
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研究分担者 |
小張 敬之 青山学院大学, 経済学部, 教授 (00224303)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CALL / 語彙学習 / 情報処理スタイル / イメージ / アニメーション / 多義語 / 注釈 / イメージ・スキーマ |
研究実績の概要 |
26年度は、研究分担者と共に本研究における理論部分において成果を挙げることが出来たと考えている。本研究は「マルチメディア環境での外国語学習は、全ての学習者にとって有効とは言えず、何らかの学習者要因によってその成否が左右される」という考えが出発点となっている。そこで本年度は学習効果に影響を及ぼしうる学習者要因として「情報処理スタイル(Information Processing Styles)」に着目した。即ち、動画やアニメーションといったマルチメディアを活用した学習教材は、利用者の学習成果を等しく向上させるとは限らず、イメージを介して情報処理を行なう者(Imagers)の方が、言語を介して情報処理を行なう者(Verbalizers)よりもマルチメディア環境用いてよりよい効果を得るという仮説を立てて検証を行った。
共同研究者や台湾の協力者との共同研究の結果、日本・台湾共に、Imagersの方が語彙学習でのマルチメディア環境をより有効に活用していることが判明した。また日本人学習者の場合は、学習効果がより表れたのは、アニメーションを見た後すぐではなく、その2週間後であるが、台湾人学習者は見た後すぐに学習効果が表れることが分かった。どちらの結果においてもマルチメディアの活用は、学習効果の持続を促進するということが明らかとなった。この研究成果を複数の国際学会にて発表したところ、多くの聴衆者からの関心を得ることが出来た。
これまでのマルチメディア利用の外国語教育研究ではマルチメディアの効果を過大評価する傾向にあったが、本研究は、その効果を認めつつもそこから一歩先に進んで、学習者個人にとってよりよい学習教材を開発することを目標としている。その意味において昨年度の研究結果は、目標へ向かう上で大きな意義を持つものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は、コンピュータを利用した語彙学習において学習者個人の要因にその成否が左右されるか否かを実証的に検証することを目標とした。日本および台湾での検証の結果、マルチメディア教材を用いてよりよい成果を上げたのは、イメージを用いて情報処理を行なう傾向のある学習者(Imagers)であることが判明した。
これまで筆者が行ってきた研究では、マルチメディア教材でも、平面イメージと文字だけの教材でも、学習効果に有意な差を見ることはできなかったが、今回の検証ではじめて両者に明確な差を見出すことができた。この研究結果は既に複数の国際学会にて発表し、聴衆者から多くの関心を受けると同時に多くの示唆を与えてもらった。これらを踏まえて現在論文を執筆している最中である。近く国際ジャーナルに投稿する予定であり、研究期間内に刊行されることを目指している。
この成果は、マルチメディアを活用した外国語教育教材が全ての学習者にとって有効であるとは限らず、学習者個人の要因によりその成否が異なることを示し、本研究の大きな目標である「学習者個人の特徴に合った教材作成」を大きく支持するものとなったと言える。その意味において本研究はおおむね順調に進められていると言うことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、26年度において本研究の理論的支えとなる成果がある程度得られたため、先ずこの研究成果を論文として公刊する必要がある。またそれと並行して、学習者の情報処理スタイルに合った外国語学習アプリケーションの開発を進めていくことになる。
アニメーションを利用した語彙学習は、イメージを媒体した情報処理を好む学習者にとっては有効であるが、言語を媒体にした情報処理を好む学習者には必ずしも有効とは言えないため、彼らにとってより有効な学習アプリケーションを開発するための準備を27年度中に行い、可能であればプロトタイプを公開して何人かの学習者を募って学習効果の予備実験を行ないたいと考えている。
即ち、27年度は理論的検証を行いつつも、そのアプリケーション化に向けて具体的に動き出す年と位置づけて研究を行っていく所存である。
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