研究課題/領域番号 |
26370658
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 健 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402242)
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研究分担者 |
小張 敬之 青山学院大学, 経済学部, 教授 (00224303)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CALL / MALL / Individual Factors / Autonomous Learning / Automatization / Vocabulary Acquisition / Writing / Flipped Learning |
研究実績の概要 |
本研究は学習者要因に応じた英語学習アプリケーションの開発が最終目標である。4年計画のうちの2年目である前年度は、学習ツールや学習スタイルが学習者にもたらす影響を実証的に検証を行った。
先ず1つ目であるが、理工系大学の大学2年生を対象にアカデミック・ライティングに必要な表現をモバイル用アプリケーションとして開発し、それを用いて学習した場合の効果と学習者の動機付けについて検証を行った。その結果、アプリケーションを用いて学習した学生は、それを用いずに学習した学生よりも、より多くの表現を学習できたと同時に、それらの表現を地震が書いたエッセイの中により多く取り入れることができた。さらに学習者アンケートの結果、学習の動機付けがアプリケーションを利用しなかった学生よりも、利用した学生の方が有意に高まったことが判明した。もう1つは、反転学習における教室外学習にモバイル用アプリケーションを利用した場合の学習効果と学習者の動機付けについての検証を、上の検証と同様のアンケートを用いて実施した。経済学を先行する大学1年生を対象とした英語科目を反転授業の形式にて実施する際、教室外学習にモバイル用アプリケーションを利用してもらい、授業内ではアプリケーションに準拠したテキストを用いて授業を1学期間行い、授業前後でのTOEICテストスコア及び動機付けの伸びを検証した。その結果、TOEICスコアについては反転授業前後で有意な向上が見られたものの、動機付けについては、伸びが確認されなかった。
これらの結果は、本研究の前提である「マルチメディア環境での学習教材でも学習者がその効果を一様に得られるわけではない」ことを立証することができた。この意味において、マルチメディア環境による学習教材を、学習者それぞれの学習スタイルや能力に合わせて、適切に利用するための検証は本年度を持ってほぼ完了したと言って良い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先にも述べたように、前年度の目標はマルチメディア環境での学習ツールや学習スタイルが学習者にもたらす影響を実証的に検証することであったため、大きく2つの検証を、異なる学習者と学習環境によって実施することとなった。
1つ目の検証では、モバイル用アプリケーションを用いた学習者は学習効果も学習への動機付けも高まった。しかしもう1つの検証では、学習効果は高まったが、動機付けにはつながらなかった。これらの結果は、アプリケーションの効果だけででなく学習者要因が大きく影響していることを示唆している。4年計画の2年目においてこのような検証結果が出ることは、残り2年での学習者要因に基づいたアプリケーション開発と、その効果を検証する計画をスムーズにすることを意味するため、進捗状況は「概ね順調に進展している」と評価することとした。
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今後の研究の推進方策 |
学習者要因を探る検証については、これまでの2年間でほぼ完了したと判断しているため、今後は、学習者要因を意識したアプリケーションを開発し、その効果を検証することが目標である。
本年度は、一昨年度の検証した「情報処理プロセス」に基づくアプリケーションを開発し、その効果を検証することを行う予定である。マルチメディア環境、特に映像を用いた学習アプリケーションの学習効果は、学習者要因によってその効果に差が表れることがすでに判明している。特に情報処理プロセス、即ち、言語を用いて情報処理を行なう志向の学習者と図やイメージを用いて情報処理を行なう志向の学習者それぞれに対応した学習アプリケーションを開発していく予定である。今年度は、学習者が深い情報処理を行う必要のある言語知識、具体的には基本的な語彙ながら多義的ゆえに運用が難しい句動詞(動詞+前置詞・副詞)に着目し、マルチメディア環境を活用した学習アプリケーションを開発し、その効果を検証しながら、よりよい学習環境、教材開発のあり方について方向性を見出していく所存である。
今後の課題としては、学習者要因の重要性を論じている一方で、多様な学習者対して検証を行えているとは言えない点をどう克服するか、という点が挙げられる。日本だけでなく、母語が異なる学習者に対しても実証検証を行い、より汎用性のある主張を行えるようする必要がある。
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