本研究では「仕事で英語が使える人材育成」という英語教育の最終目標に指針を得るために、学習者の自律学習調整力の向上に効果的なESP(English for Specific Purposes)カリキュラムの構築を目指し、NIRS(近赤外分光法)を活用して、教育工学分野におけるATI(適正処遇交互作用)理論を基に実験を遂行した。学習者特性として英語習熟度を取り上げ、課題の種類や難易度、課題遂行時の脳内賦活部位の差異、及び記憶定着の関連性を実験により分析した。その結果、通常の授業実践や筆記試験では判断できない、学習者特性と課題や指導法の最適な組み合わせの提案が可能になった。さらには、脳内活動データが教員単独による教材選択の不足点を露呈したことにより、効果的な英語学習方法の模索に新たな一考を投じたと言えよう。 そこで平成28年度は、これまでの研究成果から得た知見を、追実験と授業実践に活かすため、工科系及び医療福祉系の学部において、ESPに特化したニーズ分析を実施した。追実験ではニーズ分析の調査結果を参照して、オーセンティックな会話教材を使用し、さらに、メタ認知学習法(自己モニタリング)を取り入れた事により、新たに教員介在の重要性が明らかとなった。 この実験結果を授業実践に取り入れるため、担当しているESP関連科目を、双方向対話型の授業が可能であるクリッカーシステムが導入されたPC教室で実施することにより、全受講生と授業内で積極的に関わった。同時にプレゼンテーション等を実施して、学習者の自律性を奨励するアクティブラーニング型の授業を実践したことにより、学習者の授業への積極的な参加と期末試験において多少の効果が確認できた。より精緻な結果を得て最終目標を達成するためには、さらなる研究の継続的が必須であるが、脳活動データを効果的な指導方法の検討に導入することの意義は確認できたと考慮される。
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