研究課題/領域番号 |
26370675
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
飯野 厚 法政大学, 経済学部, 教授 (80442169)
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研究分担者 |
岡 秀夫 目白大学, 外国語学部, 教授 (90091389)
中村 洋一 清泉女学院短期大学, 国際コミュニケーション科, 教授 (70326809)
籔田 由己子 清泉女学院短期大学, 国際コミュニケーション科, 准教授 (80515958)
藤井 彰子 聖心女子大学, 文学部, 講師 (60365517)
JOHNSON HEATHER 法政大学, 講師 (50726479)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウェブ会議(ビデオ会議) / コンピュータ媒介コミュニケーション(CMC) / スピーキング / 流ちょうさ / 複雑さ / 正確さ / 達成感 / 国際的志向性 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、日本人が英語を話せるようになるにはどのような指導法が有効かを明らかにすることである。具体的には、英語学習者である日本人大学生16名に、オンラインによるウェブ会議(ビデオ会議)を定期的かつ継続的に体験してもらった(毎週1回、年間18回)。フィリピン在住の英語教師と日本人学習者ペアが英語によるディスカッションを行うことで、英語スピーキング力、英語習熟度、ウェブ会議の使用感、国際的志向性にどのような変化が起こるかを見た。ウェブ会議における英語による討論の準備のための授業では、日本人同士で討論したり、英語表現の確認を行ったり、プレゼンテーションを行ったりした。このような授業とウェブ会議のタスクサイクルを年間を通して繰り返した。結果として、スピーキング力では、語数における量的な流ちょうさと、1文中の語数に基づく複雑さに伸長がみられた。しかし、正確さにおいては有意な変化は見られなかった。リスニングとリーディングによって操作化した習熟度においても有意な伸長が見られた。とりわけリスニングにおいて伸びが著しかった。ウェブ会議の使用感においては、「難易感」において有意な変化が見られた。具体的には、「回数を重ねるごとに緊張感が減った」、「回数を重ねるごとに言いたいことが言えるようになった」、「思ったより話せた」などの感覚が増した。また、「ウェブ会議の使用は英語スピーキング力向上に効果的」という意識も高まった。英語を話せたという達成感を示す項目群においても有意な伸びが見られた。国際的志向性においては、「国際的な職業・活動への関心」項目群において有意な伸長が見られた。総合的に見て、ウェブ会議における英語話者との討論を軸にした発信型の指導は、英語力や心理的側面に肯定的な影響を及ぼすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初は「英語が話せる」力の定義と構造の解明を目的に、(1) コミュニケーション分析と言語分析の融合的指標を視野に入れたウェブ会議における対話を客観的に分析する方法の研究と開発、(2) 対話によるコミュニケーションに焦点を当てたスピーキングテストと習熟度構成要素、コミュニケーションへの意欲指標との関係を探るとしていたが、(1)については、文献研究の結果、コミュニケ―ション分析には様々な観点が存在し、どの観点を活用するか未定である。また、実際のコミュニケ―ション分析に至っていないので、2年目に持ち越す課題となっている。(2)については、オンラインによるウェブ会議の実施計画作成と実行に多くのエネルギーを費やしたり、指導開始期、中期、終期のデータ収集と分析にかなりの労力を要することが分かったため、各データを独立した形で分析するにとどまった。今後、予定通りデータの構成素間の関係をさぐる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の課題である(1) ウェブ会議の対話実践を含んだ指導による長期的なスピーキング力の変化を検証するため、複数の大学において実践を展開し、データ収集を行う。その結果を利用して、(2) スピーキングテストやウェブ会議における学習者の言語データ分析を行う。習熟度や学習者心理などの要因との関係を探る。1年目のデータを再分析することも含め、テストデータや質問紙データを統合的に解析する。さらに、1年目に積み残した課題として、コミュニケーション分析の手法を、先行研究にあたりながら決定する。具体的に、教師によるフィードバックの種類と学習者の反応、学習者による発話の語用論的分析、教師と学習者の発話時間やターンの計量的比較などを想定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
テスト結果などのデータ分析は実施したが、予定していたコミュニケーション分析を人に依頼して行うことができなかったため、人件費の支出がなかった。また、海外への資料収集も校務多忙により出かけることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目は、コミュニケーション分析、とりわけ産出言語のトランスクリプション(文字化)作業に一定の人件費を支出する予定である。また、情報収集・資料収集のための海外出張、必要物品の過不足のない購入を早期に行う予定である。
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