研究実績の概要 |
本研究者は,日本人英語学習者が効果的に英語特有のリズム発音を習得する方法として,聴覚性プライミングの原理を利用した発音学習を提案している.本研究では,近い将来英語リズムの発音トレーニング教材を開発するため, 1.どのような語(例:単語,定型表現レベル)において, 2.どのような提示方法で(例:文字情報,リズム・パターン), 3.どのように学習方法で(例: 暗示vs.暗示+明示), 4.どのような期間(集中 vs.分散)で訓練すれば,日本人英語学習者が苦手な語におけるリズム(語強勢:弱母音の強母音に対する長さの割合と,弱母音の質)の発音習得に最も効果があるのかを検討する.
平成27年度は,2. 刺激語の提示方法:リズム・パターン(以下, リズム)の反復が,後続に提示される英文における語強勢の産出にどのように影響するか,音声分析を用いて検討した. 実験では2種類のリズム: 強弱弱強(SWWS)と弱強弱強(WSWS)を用意した.リズムはドラム音とシンバル音で作成された.参加者は提示されたリズムを“ta”という音で反復し,その直後に音声または文字提示される英文を読み,発音は録音された.提示される英文の強弱のリズムは,先行するリズムと同じ場合(matching)と異なる場合(mismatching)があった.分析の結果,先行するリズムが後続の英文のリズムと同じ場合(matching)に語強勢(長さ)の発音が向上した.短時間でも母語と異なる第二言語のリズムのインプットから,無意識のうちにリズム情報を内在化し,後続の音声産出を向上させるという結果は,成人学習者の発音学習への示唆,また,第二言語の音韻処理・習得のプロセスの解明において意義があると考える.このリズムのプライミング効果が,英語力,リズムの種類,英文の提示方法(音声,文字)の要因によってどのように異なるのか現在分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では下記の要因を検討する実験を計画している. 1.どのような提示刺激語を(例:単語と定型表現)2.どのような提示方法で(文字情報,リズム・パターン情報)3.どのように学習(例:暗示的学習vs.暗示的学習+明示的学習)4.どのような期間(例:集中学習 vs.分散学習).3年計画のうち,1年目に(2)の文字情報の要因の調査をおこなった.2年目に(2) リズム情報の要因について調査を終える予定であったが,27年度後半における体調不良により,十分な分析を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は, 先に述べた研究目的のうち,2.リズム情報の要因のさらなる分析と並行して,未検討要因である,3.どのように学習する(例:暗示的学習vs.暗示的学習+明示的学習)と4.どのような期間(例:集中学習 vs.分散学習)について行う。3.と4.は個別で行うのではなく,両要因を統合させ,効率よく実験を行っていく.
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次年度使用額の使用計画 |
「次年度使用額」については,下記の通りの使用を計画している: 国内・国際学会参加料・旅費(500千円),英文校閲料 (400千円), 学会誌投稿料(30千円),ノートパソコン(300千円),音声実験用の材料作成のためのナレーション収録料(50千円),実験アルバイト料(120千円),消耗品費(図書, インクカートリッジ, 発音学習関係のDVDなど)(250千円), ウェブ・アンケート使用料(50千円).
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