研究実績の概要 |
日本人英語学習者を対象に,音声反復による発音学習の効果(聴覚性プライミング)を検討した.発音項目は,シュワーの長さ(強母音に対するシュワーの割合)と音質であった.単語・文の提示方法が,プライミングによる発音学習にどのような影響を与えるのかを明らかにすべく2つの実験を行った.
実験① 音声反復の際,文字の提示が発音学習にどう影響するか検討した. 20名の日本人大学生(英語力中級)が参加した.実験では「学習期」に, 刺激語を「音声のみ8回」,「音声+文字を同時に8回」,「音声7回→音声+文字1回」のいずれかの方法提示し,参加者に反復してもらった. 10分後の「テスト期」では,刺激語の音声反復と音読をしてもらった. その結果, 音声反復・音読のいずれの場合でも,学習効果を得るには, 学習期での十分な音声反復が重要であること,特に音読の場合,文字の負の影響を避けるためには,まずは音声のみで,その後音声と文字を一致させる十分な学習の必要性が示唆された. 実験②音声文に先行して,音声文と同型のリズム音を繰り返すことが,発音学習を促進するか検討した.参加者は日本人大学生10名(英語力中級)であった.参加者には,まず,4拍のリズム音をtaの音で反復してもらった.続いて,4音節のモデル音声文を反復してもらった.その結果,リズム音(例 弱強弱強)と後続文のリズム型が一致する場合(例She feeds the dog.)に有意な学習効果がみられた.リズム音の反復により後続の音声文のリズム型の予測が可能となり,音声的に卓越した部分に注意を向けやすくなるため発音学習が促進されると考察される.
以上の2つの実験において,シュワーの音質の面(分節音)より, シュワーの長さの面(プロソディー)で顕著な学習効果がみられた. 暗示的発音学習の場合, 知覚上の卓越がある項目で学習効果を得やすい可能性を提示した.
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