本研究は、コンピューターを使った学習(Eラーニング)を行う際に、従来の文字入力方式である「キーボード」に代わる新しい手段として「手書き認識」の機能を利用することの可能性およびその特徴を明らかにすることを目的とすると同時に、この「手で書く」ことを学習課題に取り入れた新しいEラーニングによる英語学習環境を構築し、これを利用した英語授業を継続的に行うことによって、その効果を実証することを目的とする。 まず最初に、手書き機能を実装したEラーニングシステムのプロトタイプを作成し、これを利用した場合の学習者の学習行動の分析を行った。学習内容は英語の単語入力で、これを従来型のキーボード入力で行う場合、手書き用のペンタブレットを利用する場合、およびタブレット端末を利用した場合の入力効率を計測した。この結果、すでにキーボード入力に熟達した学習者の場合はキーボードによる入力が圧倒的に効率が高いが、そうでない学習者においてはタブレット端末による手書きの効率がよいことがわかった。 次に、この手書き機能を実装したEラーニングシステムを授業実践においても利用するため、WindowsタブレットPCを使った語彙学習教材を作成し、授業での利用を開始したが、高専生の特徴としてすでにキーボードに慣れている学生が多く、学年が高くなるほどキーボード入力を選ぶことが多かった。学生に対するアンケート調査では、手書き入力の良さを認める意見があった一方、キーボードがないことによるタブレットPCの使い勝手の悪さを指摘する意見が見られた。 そこで、OS標準の手書き認識機能を使わず、WEBブラウザ上に直接手書きができるインターフェイスを開発し、これを実装した語彙学習システムを開発した。これにより、文字入力の効率は特にキーボード未習熟者において大きく向上した。
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