昨年度までの研究成果を二つの国際学会にて発表した。 1.日本のビジネス雑誌が特集する「英語学習」記事分析:読者層が英語力・英語学習意欲の低い日本人ビジネスマンに限定されているせいか、「脱英語ネイティブ」的記事が多く見されたが、「アジア英語」「国際英語」といった用語が恣意的に使われており、学術的知見からの影響がほとんど見当たらないことを報告した。 2.アセアン準英語圏での調査:「言語文化的に寛容」であり、不安感の高い日本人英語学習者に適しているといわれるアセアン準英語圏であるが、「イギリス英語」で教育を受けたシニア管理職層とそうではない若い地元英語教師たちの間の世代格差、調査参加者が許容する欧米英語圏との住み分け意識について報告すると同時に、「ノンネイティブ教師」としての高いプロ意識が日本の英語教育に与える示唆についても議論した。
「アセアン準英語圏での英語研修経験者100名」と「欧米英語圏での英語研修経験者100名」に対する調査結果をまとめた論文を国際ジャーナルに投稿・修正した結果、採択された。欧米とアセアンという二つの英語圏を行き来する英語学習者たちの存在が珍しくないことを確認できたことは、「海外経験」の流動性・多様性を考える上で重要な示唆となった。発展研究として、こうした「越境する英語学習者」たちの存在について、一般社会に対してはどのような情報やイメージが発信されているのか探るため、そうした人物を登場させている小説を調査した。その結果を踏まえ、メディアで大きく取り上げられた直木賞受賞作品とノンフィクション作品を分析対象として、主に「英語のプロ(ビジネス翻訳者)を目指す女性」や「海外英語圏(アメリカ、シンガポールなど)の日系企業に就職する女性」という存在(描写)が一般社会の中で当たり前に受け入れられている社会文化的背景について考察した。
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