研究課題/領域番号 |
26370694
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
鶴田 知佳子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40316782)
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研究分担者 |
内藤 稔 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (90507211)
金田 拓 帝京科学大学, 生命環境学部, 助教 (10759905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 通訳 / 教材開発 / ウィスパリング通訳 / ビジネス / 英語 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、分野や事業形態、国籍の異なる産業・企業について、特にウィスパリング通訳に関するヒアリング調査を実施した。具体的には日本、アメリカ(ニューヨーク)、イタリア(ローマ)にて、銀行やIT関連企業といった業界に携わる人物へのインタビューを行い、通訳者が活躍する場面として想定される外国人とのビジネス交渉の現場における、人数の設定や会議形式及び通訳形態の把握を試みた。また同時に、企業における通訳を養成している教育機関として、AIIC(国際会議通訳者協会)の通訳訓練セミナーに参加、各国の通訳教育研究者との交流を通じて、各国の通訳教育の現状と、先端的教材の取り組みについて情報交換を行った。確認されたこととして、社内通訳で一対一の逐次通訳を行う場面は確かに存在するが、複数の会議参加者が登場する場面をウィスパリング同時通訳する事例も数多くみられることがわかった。 上記調査の結果をもとに、ITと銀行の2分野について、ウィスパリング通訳教材の試作に着手した。遭遇頻度の高いと思われるシチュエーション2種についてスクリプトを作成し、音声の収録を行った。今後、各業界の現場に詳しい複数の専門家による検証を経て、さらにスクリプトの精緻化を行った上で、英―日方向の対訳を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はウィスパリング通訳教材開発において必要な、特に企業におけるウィスパリング通訳という、従来あまり扱われてこなかった形態に関してのニーズ調査を中心として進行した。当初の予定通り、日本・アメリカ・イタリアの3国でニーズ調査、及び通訳教育関係者との情報交換を行い、その後分析結果をもとに具体的な通訳場面を特定し、テーマ別対話型教材のスクリプトの基礎部分を作成した。社内通訳(ウィスパリング形式)スクリプトの基礎部分を試作し、音声化し収録を完了した。 これは研究計画当初の予定通りの進行であり、進捗状況としては順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である28年度は、前年度までに調査したウィスパリング通訳の特異性を踏まえて、より現実的な場面を模した教材の試作を目指す。試作にあたり、ウィスパリング通訳教材開発までの手順を概念化し、今後の教材開発や、養成過程にフィードバックすることを視野に入れている。一般的に複数の話者が順序立てず発話する素材は、複雑であり導入に向かないとして教材用として好まれない背景があり、通訳教育場面では大きく扱われないことが多い。しかしながら、実践的場面設定を実務に就く前の学生に、養成課程で提供できる意義は大きい。こうした事情を鑑み、調査で得た遭遇頻度の高いシチュエーションを教材として取り組むことは、教育研究として意義ある取り組みと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行にあたり、教材の素材となるスクリプト作成、及び音声収録を行った時期が平成28年3月中旬以降だったため、本予算からの執行が事務手続き的に不可能だったことが理由である。実質、既に使用済みといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
音声収録自体は当初の予定通り年度内に行ったため、研究予算の執行が可能になった時点での支払いを予定している。
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