研究課題/領域番号 |
26370698
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
保田 幸子 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60386703)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 英語教育 / アカデミックライティング / 語彙力 / 言語的特徴 / Grammatical Metaphor / 学習者 |
研究実績の概要 |
本研究は,外国語としての英語ライティング力の発達は,どのような言語的特徴によって説明できるのかを,近年開発された新たな指標“Coh-Metrix”による量的分析と“Grammatical Metaphor”に焦点を当てた質的分析に基づき,多角的に分析することを目的とした.研究参加者は,国立大学において必修科目の「英語アカデミック・ライティング」を履修する学部1年生である.英文課題は,米国のEducation Testing Service (ETS)が運営するCriterionの中のPersuasive Essayの問題を使用する.学習者はコンピュータを使い,1時間以内に英文を作成し,自動評価システムであるe-raterによる総合的評価を得る.学習者が産出したこの英文課題が,本研究の主要なデータとなる.
本年度は,学習者が産出した英文課題データを,前期の授業開始時と終了時(平成26年4月と7月),後期の授業開始時と終了時(平成26年10月と平成27年2月)の合計4回に亘って収集した.本報告書では,前期のデータに焦点を当てて結果を報告する.
まず,Coh-Metrixの56種類の言語的特徴がエッセイの総合点にどの程度寄与度するかについてである.データ分析の結果,学習者の「書く力」を推定するにあたり,どれくらい違う語彙を使って書けるか(=異語数)が大きく寄与していることが分かった.また,これ以外では,どれくらい多くのセンテンスを使って書けるか(=文数)や,どれくらい長く複雑な文が書けるか(=平均文長)といった要因が学習者の「書く力」の推定に寄与していることが判明した.さらに,学習者が産出した英文の質的分析の結果,エッセイの総合点が高い学習者ほど,「節」ではなく,節を名詞化したGrammatical Metaphorを産出できる傾向があることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,データ収集を終え,平成26年度にパイロットスタディを実施.成果報告の論文も,国際ジャーナル(査読あり)に掲載することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,前期(平成26年4月と7月)に収集したデータのみの分析となったため,平成27年度は,後期(平成26年10月と平成27年2月)に収集したデータの分析を行い,前期と同じ結果が得られるかどうか検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の予算が余ることになった理由は,(1)発表を予定していた国際学会に出席できなくなったため(開催が授業期間と重なったため),(2)データ分析補助の人材を雇用する予定だったが,解析ソフトの使い方についてのガイダンスに時間を割けなくなり,結果的に全てを研究代表者1人で行ったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
上述の理由で昨年度の予算を本年度分として請求させていただき,本年度は,データ分析補助の人材を雇用するとともに,昨年出席できなかった学会にて報告を行う予定である.
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