研究実績の概要 |
本研究は,外国語としての英語ライティング能力は,(1) どのような言語的特徴によって説明できるのか,(2) ジャンルの違いにより,どのような変化が見られるのかを明らかにすることを目的に実施された.(1)の言語的特徴については,語彙多様性(異なり語数),語彙密度(全体の語のうちの内容語の割合),語彙洗練性(語の難易度),文章の複雑性(全体のセンテンス数のうちclauseの占める割合),名詞句 (noun phrase)の割合という6つの変数に焦点を当てた.(2)のジャンルについては,要約文とメール文に焦点を当てた.データは,日本国内の大学で英語ライティングを必修科目として履修する大学1年生が自然な状況で(実験室ではない)書いた文章を収集・分析した.量的・質的データ分析の混合法アプローチにより,日本人英語学習者のライティング能力を詳細に記述することを試みた.分析の結果,ジャンルの違いに関わらず読み手から高い評価を受ける英語ライティングの特徴として,「語彙多様性」が一つの鍵となりうることが明らかになった.一方で,ジャンルの違いに影響を受ける言語的特徴があることも明らかになった.例えば,要約文などの学術的ジャンルでは,上級の学習者ほど名詞句を効果的に使用し,抽象度をコントロールしながら,文と文の結束性を高める工夫をしていることが分かった.メールのような口語と文語の両方の特徴を持つジャンル(blurred genre)では,上級の学習者のテクストほど文章の複雑性が高まる傾向があることが分かった.本研究の結果は,国際誌であるJournal of Second Language Writing (Yasuda, 2015),TESOL Quarterly (in press)等で報告されている.
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