研究課題/領域番号 |
26370700
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
吉村 紀子 静岡県立大学, 言語コミュニケーション研究センター, 特任教授 (90129891)
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研究分担者 |
近藤 隆子 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教 (60448701)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 応答ストラテジー / 省略分裂文 / 虚辞代名詞主語 / 統語-談話インターフェイス / 第二言語習得 / 明示的指導 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本語あるいは英語を母語とする第二言語学習者による応答ストラテジーの習得について、「省略分裂文」と「虚辞代名詞主語」という統語‐談話のインターフェイスから調査し、明示的な指導が学習上の問題点の克服に繋がるかどうかを実証的に検証することにある。 平成26年度は、打ち合わせ会議にて研究分担者と研究目標を確認した上で、まず、日英語の応答ストラテジーを統語的に考察し、次に、日本語が母語の英語学習者による応答調査のために予備実験の準備-(a)被験者の確保、(b)実験文の精査、(c)分析の方法-を検討し、予備実験を実施した。実験では、被験者12名の大学1年生に対して2回の個人インタビューを行い、wh-疑問文とyes-no疑問文をそれぞれ6文ずつ質問して回答を得た。両インタビューの間に2か月の間隔を置き、その期間中に2種類の疑問文にどのように応答するかという英語特有のストラテジーについて教室で2回(1回約30分)明示的に指導した。 実験の結果、(I) 第1回目のインタビューではyes-no疑問文に対してYes/Noのみの応答が72.2%あったが、第2回目のインタビューでは例えば‘Yes, I did.' 'No, I didn't.'のようにdo-supportを含む解答が91.7%になった。また(II)wh-疑問文に対しては、第1回目では省略分裂文(例えば、 Sushi)が45.5%であったが、第2回目では解答の95.8%が‘I ate sushi.'に向上した。これらの結果から、初級レベルの英語の応答ストラテジーの習得にとって明示的な指導が効果的であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、当初の計画通り、進んでいる。まず、日英語の分裂文について統語的な考察において、英語と異なり、日本語には‘省略分裂文’(reduced cleft)が存在することを明らかにし、その理論的な裏付けを日本語では英語の顕在虚辞代名詞 'it'に相当する虚辞代名詞proが主語の位置に可能である点に求めた。成果は、吉村が第15回日本語文法学会(大阪大学・11月22-23日)で口頭発表した。次に、実践的な調査では、英語の基本応答ストラテジーに関して被験者に個別インタビューを行い、その後に明示的な指導をクラスで2回実施し、そして再度個別インタビューを実施した。実験結果は近藤・吉村が平成27年7月に開催されるBritish Association of Applied Linguistics (BAAL)Language Learning & Teaching (エジンバラ大学・7月2-3日)で口頭発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度の予備実験の実験文や実験方法を修正し、実験の領域を広げて行く。特に、考察の焦点を英語の習熟度がより低い高校生や大学生に絞って調査することとし、個別インタビューと明示的指導を並行して実践して行く。調査では、さらに紙面調査を導入することによって、英語の応答ストラテジーに関する知識と運用能力の違いがあるのかどうかを探ってみたい。両者の間に齟齬がある場合、明示的な指導を通して、運用能力を知識に近づけることができるかどうかも考察の対象とする。また、本年度は、英語に加えて、外国語としての日本語の学習者が日本語特有の省略分裂文を用いることができるかどうかを調査し、その結果に基づいて明示的な指導の効果があるかどうかを検証できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
消費税が8%になったことで、支出で微差が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
文房具の購入にあてる。
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