研究実績の概要 |
本研究の目的は、① 中学修了生の英文法の習熟度を調査し、その実態を客観的に明らかにすること、②なぜそのような難易を示すのか、言語理論、第二言語習得研究からの成果を基に説明すること、③明らかにされた各英文法の難易度が、どのような外的要因(例:使用した教科書の相違、文法項目の出現頻度・導入順序、教室での指導方法の相違等)によって影響を受けているのか、または受けていないのか調査すること、④本研究成果を口頭発表や出版物を通し広く公表することで、日本の英語教育、特に中学校での英語教授法改良のためのヒントにすることである。最終年度(2017年度)は、特に難易度が高い文法項目であるWh疑問文および「動詞の下位範疇化(SVO, SVC, SVOO, SVOC)」の習得(「項構造(argument structure)」の動詞の種類による難易度の違いについてさらに深く検証を行い、論文執筆を行った。また、また目的の②「なぜそのような難易を示すのか、言語理論、第二言語習得研究からの成果を基に説明すること」および③「明らかにされた各英文法の難易度が、どのような外的要因によって影響を受けているのか」に沿って、②のメカニズムの理論的分析の必要性から追加のWh疑問文の関連習得実験を、③の要因の一つとして当該文法項目の教科書における出現頻度調査も加えて行った。結果として、素性継承メカニズムやWh語を牽引するプローブの種類などが習得の困難さの要因であることが明らかとなった。また、「項構造(argument structure)」の動詞の種類による難易度の違いについては、多くの複雑な要因が絡み合っており、その一つひとつを紐解くため、今後も分析し解決したものから順に論文として執筆していく予定である。
|