研究実績の概要 |
本研究の目的は,大学の英語指導における協働的ライティング活動,すなわち,ペアワーク・グループワークに対する学習者の認識を調査することである。「高い学習効果」「学習効率への懸念」「協働の楽しさ」という3因子モデルで構成される質問紙を開発した平成26年度に引きづつき,平成27年度では,前期においては協働的ライティング活動に適したタスクの作成を,後期においては協働的ライティングのタスクを大学生ペアに実施してもらい,その前後に質問紙調査を実施した。タスクに関しては,collaborative writing, pair interaction, peer learningなどに関する文献や,TOEFL,IELTS,PTEなどの既存の英語テストのタスクなどの分析を通して,複雑なイメージ図(例えば水力発電のメカニズムなど)を描写するタスク,emailを書くタスク,掲示板に書き込みをするタスクの3種類が開発された。タスクと質問紙調査の実施に関しては,習熟度の異なる48人の日本人英語学習者が同じ習熟度の学習者とペアを組んで参加し,3回の協働的ライティングタスクを完了し,その前後に質問紙に回答した。質問紙調査の結果は,習熟度の低い学習者の方が高い学習者に比べて協働的ライティングの学習効果があるという認識と,協働することが楽しいという認識のそれぞれが高いのに対し,習熟度の高い学習者の方が学習効率における懸念が高いことがわかった。また,習熟度を問わず,協働的ライティング活動前よりも後の方が,協働の学習効果と楽しさについての認識が高まったのに対し,協働に対する懸念に対する大きな変化はなかった。本年度の研究により,学習者の習熟度,協働的ライティングに対する認識の高さ,その認識の高まりの程度の間の関係の一端が明らかになり,認識の変化に関する今後の詳細な調査に向けての足がかりが得られた。
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