研究課題/領域番号 |
26370706
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
姫田 麻利子 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (50318698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 言語ポートレート / 言語バイオグラフィ / ライフストーリー / 外国語運用能力 / 外国語イメージ / フランス語 |
研究実績の概要 |
H27年度の調査・分析はおもに、留学経験あるいは既習外国語の運用経験のない大学生のポートレート(1)と、国際移動経験(1年以上の留学含む)経験者のポートレート(2)の比較に焦点を置いた。 まず(1)について、昨年度の分析を深めた。このグループの特徴として重視したいのは次の点である。既習外国語との関係では、情緒よりも機能が重視されていること、高校までの学習方法の結果として自己能力評価があり、それを土台に現在の目標意識があること、第二外国語の学習により、周囲で一般的な外国語価値観からの独立が促されること、短期間の留学でも学習言語の運用を経験すると、一般的な価値観から自由な価値観を表現できるようになることである。 (2)の調査・分析では、使用頻度や能力と関係なく言語と情緒的な関係が表現されること、 (1)のグループよりもポートレートに表れるアイテム数が多いこと、背景が表れること、母語の概念が一元的でないこと、学習や使用に関わらないエピソードが表れることを、特徴として重視した。 上記の点について、フランス国立東洋言語文化学院で行われた国際研究集会 “Intercultural mediation and Teaching and Learning languages and cultures” で研究発表を行った。 言語バイオグラフィの分析方法、抽出項目に関しては、フランスから研究者を招聘し、また言語教育研究のなかで様々な角度から言語バイオグラフィに注目している国内の研究者と、意見交換のワークショップも行った。言語に関わる社会的イメージ、個人固有のイメージと、複言語使用の関係を見る研究において、研究者自身のイメージの介入があることと、言語バイオグラフィ調査における言語リソース価値化のためのふり返りの機能について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アプリのコンテンツ項目の策定が遅れている。調査分析の進度が早く、その結果を反映できていない。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、留学終了学生を対象としたポートレート変化分析と、国際移動経験者のポートレートおよび言語バイオグラフィ調査、およびアプリのコンテンツ充実と試用実験を行う。 国際移動経験者に関しては、移動経験のない大学生との比較とは別の観点で、バイオグラフィ・エピソードとポートレート表現の関係の分析を深めるとくに、文化間仲介エピソードとポートレート上の固有の価値観の表象に注意する。また、H27年度中に、彼らの言語リソース価値観では、母語概念が一般的な価値観から独立したものである場合を見たが、そのほかに「移動」「継承言語」「社会的上昇」「仕事の言語」「敵性言語」、文化知識をともなわない言語リソース、言語知識をともなわない文化リソースについても、着目する。 このプロセスにより、大学生の複言語能力の上位の発展目標を考察する。 多文化共生に関わる取り組みのさかんなカナダで、言語バイオグラフィ調査を行う研究者と、人体シルエット調査用紙ではない方法でポートレート調査を行う場合の方法論について意見を交換し、人体シルエット調査用紙が汲み取れない項目について検討する。 上記の結果をアプリのコンテンツに取り込み、試用実験準備を実施する。 また来年度の研究集会と成果公表の準備も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際研究集会への国内招聘講師の病欠のため。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度のミーティング招聘に使用する。
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