研究実績の概要 |
本年度は、日本人大学生のうち長期留学経験者、日常的に二言語以上を使用する大学生、日本からフランス語圏の国への移住者を対象に、言語ポートレートおよびインタビュー調査を実施し、一部について成果発表を行った。 Byramら (2009)によれば、異文化間能力の条件は、出身文化とは別の文化に開かれた態度や共感や、別の文化に帰属を感じること、その実践を採用することだけでなく、むしろ自分の考えや行動をふりかえることにある。言語ポートレートは、個人的経験のふりかえりを深めやすい活動である。とすれば、言語ポートレートは異文化間能力の評価にも、優れた方法だと言える。他方、異文化間能力については、伝統的な外国語能力評価基準において具体的な記述が先送りされてきたが、複数言語文化レパートリーを使い分ける経験を重ねた人々の証言は、その議論の発展を助けるものである。たとえば、長期留学を経験した日本人大学生の言語ポートレートに表れた「外国人が自分の出身国に抱くイメージの一部に賛成し、安心させる」力や、移住者が証言した複層的な価値観を行き来するだけでなく、その接点を見つける力は、移動の経験により得られる力を構成する項目と考えられる。 成果発表は、以下のとおり行った。 - "Le frein des autostereotypes dans le cadre de la mobilite", Colloque international : The Near and the Far: Teaching, Learning and Sharing of Foreign Cultures(主催PLIDAM;於:フランス国立東洋言語文化学院-パリ),2016年6月9日. - 「言語ポートレートと複数言語使用」日本フランス語教育学会2016年度秋季大会(於:金沢大学 角間キャンパス),2016年10月16日.
|