研究課題
英文の読解過程における未知語の推論について、大学生を対象に研究・調査を行い、英語学習者が未知語の推論のたまに用いる方策についてさまざまな知見を得ることができた。研究・調査は2つの大きな流れで行った。すなわち、量的研究と質的研究である。量的研究では、比較的語彙レベルの低いパッセージを用いて79名の大学生を対象に行った実験と、81名の大学生を対象に比較的語彙レベルの高いパッセージを使った実験を行った。前者の調査では、語彙レベルの手がかりによる推論は良い結果につながらないこと、文章や未知語の周辺の統語や意味にかかわる材料を手掛かりにすることは有意義であることなど明らかになった。また、複数の方策を用いることのできる学習者の推論は比較的友好であった。一方、79名を対象としたより高度な語彙レベルのテクストを用いた実験では、複数の方策があまり推論の成果につながらない結果を得た。統語レベルの手がかりについては、上記の両研究とも高い使用頻度を示したものの、成功度については前者と後者でばらつきがあった。さらに、後者の実験では、推論に影響を及ぼすさまざまな要因として、コロケーション、品詞、語のもつ意味特性などがあることが分かった。品詞的には、名詞より、動詞の方が、特に意味的に明快な動詞については、推論の成功度が高い傾向が示された。なお、質的調査においては、5名の大学生を対象に、読解過程における未知語の推論の様子を、音声記録を分析することで行った。ここで得られた知見としては、コンテクスト的にわかりやすい動詞は推論され易いが、副詞や形容詞などの品詞の語は、よほど意味手がかりが周りになければ、推論がとても難しいことが分かった。比較的レベルの高い学習者においても、副詞や形容詞では、ごく近い意味の推論はできるものの、詳細にわたる微妙な意味はなかなかくみ取れない傾向が見られた。
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津田塾大学紀要
巻: 49 ページ: 59-77
津田塾大学言語文化研究所報
巻: 32 ページ: 63-71
巻: 31 ページ: 49-58