• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

L2習得における音響特徴と音韻カテゴリマッピングーメタ認知的知識の役割

研究課題

研究課題/領域番号 26370711
研究機関法政大学

研究代表者

川崎 貴子  法政大学, 文学部, 教授 (90308114)

研究分担者 Matthews John  中央大学, 文学部, 教授 (80436906)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード音韻習得 / 第二言語習得 / 音韻論
研究実績の概要

平成28年度は、第二言語音韻習得の過程で、低次の知覚において音響的手がかりの利用がどのように変化していくのかを明らかにするため、これまでの2年間に行ってきた音声知覚実験に、新たな被検者群を加え、3つの異なるレベルの日本人英語学習者の英語の音声知覚の結果を比較分析した。また、異なる音素を持つ中国語話者と日本語話者を対象とした英語の知覚実験を行い、母語の音素目録の違いによって、低次の音響手がかりの利用がどのように異なるのかを調査した。
日本語母語話者と中国語母語話者の比較実験では、母語の音素の違いが低次の音響手がかりの利用に影響を与えていることが明らかになった。また、母語の音素の存在が、音の弁別に必要とされない音響手がかりの抑制に繋がっている事を支持する結果も得られた。
また、異なる3つのレベルの英語学習者の結果と、英語母語話者の結果を比較することにより、新たな音素カテゴリーの構築が低次の音響手がかりの利用を抑制するのかを調査した。そして新たな音素が加わった学習者の類似度判定は、英語母語話者の類似度判定に近づいていくのかどうかを分析した。
学習者レベルが高くなり、新たな音素が加わることで、必要の無い音響手がかりの利用抑制が行われていることを示唆する結果が得られた。また、新たな音素が音素マップに加わることで、母語に存在している音素同士の類似度判定に変化が見られた。これは音素が音素マップに追加されることで、音響手がかりの抑制が起こることに加え、音素同士の距離を再構築が行われていることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

音響手がかりの抑制についての実験については、インターネット上のサーバーを通して実験を行うことができたため、長期海外滞在者によるデータ、そして英語母語話者のデータの収集が完了し、これまでの2年間の研究で得たデータと併せて分析を行うことが出来た。また、中国語母語話者のデータも、留学生に対面での協力を仰ぎ、収集を行っている。現状で得られたデータの分析結果は、今年度、紀要論文として発表した。
一方、聴取者の注意により、母語にない音素の知覚が異なるのかどうかの、メタ言語的知識の実験の進捗状況は望ましくない。今年度、実験の指示文により特定の音素手がかりに注意を集中するよう促したグループと、そうでないグループの知覚実験に差があるかどうかの実験を行った。しかし、望ましい結果は得られなかった。一番の問題点は、どちらのグループでも、注意による効果を計測するには正答率が比較的高く、天井効果が見られたためであった。現在、注意を促すための新たな手法に加え、タスクの難易度を上げた実験の構築を行っているところである。

今後の研究の推進方策

母語に無い音の知覚・知覚学習が聴取者の注意レベルを上げることにより促進されるのかどうかの実験を引き続き修正し、構築する。28年度に行った実験ではタスクレベルの難易度が十分に高くなかったため、1)音声刺激にノイズを追加すること、2)知覚を行う音声ペアを追加し、実験ターゲットを絞りづらくする の2点の変更を行う方向で計画を進めている。

次年度使用額が生じた理由

研究代表者の義母が要介護の状態になり、介護者などの手配のため、予定より実験が遅れた。また、音韻カテゴリー習得に関する実験で、中国語母語話者の参加が少なかった。それでも習得と抑制に関する調査のデータは概ね収集し終えた。しかし、特に注意の効果を調査する実験の実施が遅れ、その結果、その再実験の実施が年度内に間に合わなかった。

次年度使用額の使用計画

今年度は昨年度実施し、実験の再構築が必要となった注意の効果を調査する実験の改良し、再度実験を行う予定である。インストラクションやインターベンションによる注意の喚起が音声知覚や、音韻学習の促進に繋がるといえるのかどうかの実験を引き続き修正し、構築する。具体的には、音声刺激にノイズを追加し、知覚を行う音声ペアを追加する予定である。また、これまでの実験の結果を併せ、国内、または海外学会にて発表する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 中国語話者と日本語話者による 英語摩擦音の音声知覚2017

    • 著者名/発表者名
      川崎貴子・田中邦佳
    • 雑誌名

      法政大学文学部

      巻: 第74号 ページ: 59-66

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Phonological processing under conditions of reduced input: Do child returnees suffer L2 phonological attrition?2017

    • 著者名/発表者名
      Matthews, John
    • 雑誌名

      Studies in Language Sciences

      巻: 16 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] L2 音韻習得:注意と音韻カテゴリー形成2016

    • 著者名/発表者名
      川崎貴子(編者 日本音韻論学会)
    • 雑誌名

      書籍タイトル:現代音韻論の動向

      巻: なし ページ: 122-123

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] Phonemic Category Formation and Suppressed Sensitivity to Extraneous Acoustic Cues2016

    • 著者名/発表者名
      John Matthews, Takako Kawasaki, Kuniyoshi Tanaka
    • 学会等名
      Acoustical Society of America
    • 発表場所
      Salt Lake City, Utah, USA
    • 年月日
      2016-05-23 – 2016-05-27
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi