研究課題/領域番号 |
26370717
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
安達 理恵 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (70574052)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 異文化間コミュニケーション / グローバル人材 / リメディアル教育 / 国際交流 / 異文化間能力 / 海外留学 / コミュニケーション力 / CLIL |
研究実績の概要 |
平成27年度は,①異文化の人と積極的なコミュニケーションを取る態度を育成する指導法,②効果的な異文化間交流プログラムの策定,③特に苦手とする学生に最低限の英語力獲得を目指すリメディアル教材と指導法の検討,④自律した学習者を育てる異文化理解インターンシッププログラムの構築,を主とする教育プログラムを前年に引き続き構築することが主な目的であった。このうち,①については,RT (Readers’ Theater)を当該年度の授業で取り入れたところ効果がある程度見られた。またコミュニケーション関連の授業では,身体動作を伴う多様なアクティビティーを27年度も実践し,学生のコミュニケーション力育成に一定の効果が伺えた。②については,前任校で,昨春にマレーシアの大学を訪問したが,大学を異動することになったため,個人留学の機会を提供するだけになった(1名が留学中)。このため,28年度は,異動した新しい大学で,異文化間交流プログラムについて検討する予定である。また,前任校で行った学生の海外留学意識についての26年度に発表した調査結果を論文に執筆した。また,前任校の学生の主な就職先となる企業にグローバル動向に関する調査を行った。この結果をイギリスの学会で発表し,論文を執筆した。③については,前年度に苦手な学生の英語に対する意識を探るインタビュー調査を行った結果をまとめていたので,報告書に執筆をし,これまでの成果をまとめてワークショップ形式の発表も行った。また④については,前任校では,海外インターンシッププログラムの確立は英語力の壁があり難しいと判断し中断したが,現勤務校でも,英語が苦手な学生がある程度はいるため,可能性を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の目的も,実績の概要に記載した,①~④の4つを主とする教育プログラムの構築を中心に行うことであった。このうち,①と③については,研究実績にも記入したように順調に進んでいると考えられる。しかし,②に関しては,大学を異動し,国際交流に関する環境が大きく変わってしまったため,新たな赴任先で異文化間交流プログラムを検討する必要がある。但し,異文化に関する意識に関してはヨーロッパなどの研究などによれば,早い段階(若い年齢)で異質なものに対する尊重意識の育成は重要と考えられた。そこで,年齢が若い段階から効果的な異文化間交流プログラムを考えるため,関連する書籍を読み,またイタリアでCLIL(内容言語統合型学習)の授業を参観した。これらの研究活動に基づき,書評を執筆し,また学会のシンポジウムで異文化間能力の育成に関する報告を行った。また,効果的な異文化間交流の在り方や将来学生が実際に異文化接触の現場で必要とされるのはどのような力かを探るため,製造業を中心とする企業のグローバル動向に関する調査を行い,その結果,海外授業展開は,今や欧米よりむしろアジア諸国がますます増える傾向にあり,新入社員には,それほど高い英語力ではなくむしろ異文化間コミュニケーション力も必要としている等の結果が得られ,これを発表,また論文も執筆をした。④については,前任校の英語が相当苦手な学生の場合(単文を書けない,文章が読めない),海外での体験型インターンシップ先や外国人労働者が多い企業先を探すのはやはり困難であり保留になっていたが,現勤務先のある程度苦手な学生(複文が書けない,簡単な文章なら理解できる)を対象に,海外に拘らず,国内で異文化理解のためのインターンシッププログラムの構築が可能かどうかについて,再度検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,前年に引き続き研究実績の概要に記載した,①~④の4つを主とする教育プログラムの構築を検討しつつ,加えてそのプログラムをまとめてテキストとして作成することを当初は計画していた。しかし,①~④のうち,いくつかは順調に進んでいるものの,勤務先を変わったことなどもあり,順調に進んではいないものもある。また英語が相当苦手な学生の場合は,学習開始時期に嫌いになって以来,ほとんど勉強に向き合うことなく大学に来てしまっており,英語の必要性も感じていないことが分かった。英語や数学のような積み重ねが必要な科目の場合,特に学習開始時期の躓きがその後ずっと影響するが,現行の教育システムでは,高校は到達すると想定されている学力に必ずしも達していなくても卒業でき,また大学も受け入れている現状がある。今後は,やはり学習開始時において,いかにグローバル人材に,必要な資質,特に英語に特化せず少なくともどのような資質があれば,様々な異文化間状況でも対応でき,異なる価値をもった人々と関係性を築こうとする積極性を持つことができるか,についてより検討する必要があると考えている。そこで今後は,①と③については,これまでの教育実施上での知見や研究結果をまとめていくが,②と④に関しては,英語に限らず今後,異文化理解のための実践的教育プログラムをどのように構築できるかを,改めて検討する。また,これまで学会で発表してきたいくつかの研究成果は論文にまとめる予定である。その他,イタリアでCLIL(内容言語統合型学習)の授業を参観し,英語のみを目的とせず児童の多様な力を育成しながら異文化に対する関心や協同性を育成するアクティブラーニング型の授業の在り方を知る機会を得た。CLILは英語に特化せず今後のグローバル化時代に必要な力を育成すると考えられたので,これについても今後詳しく調査して行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に異動したこともあり、海外での発表が多くなり、良否を予定より多く使用したため前倒し支払い請求を行ったが、それが余った。但し、これは年度末の出張経費が未精算のためであり、清算すると残額は生じない。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定より、平成27年度は多く使用したため、平成28年度は海外発表を減らす予定である。
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