研究最終年度として、大学英語教育におけるコーソーシングの可能性について、これまでの理論研究やケーススタディによって明らかにしてきたものを基に、A大学におけるモデルケースとして、企業Bと企業Cとのコーソーシング事業として、留学プログラムの共同実施を提案し、実践に移した。 最終年度、それまでの理論・調査研究を活かす形でモデルケースに取り組む過程で、想定しない様々な実践知が得られる研究となったことは思わぬ成果であった。具体的には、コーソーシングの場合、既存の組織に導入する場合は何らかの「改革(改変)」を伴うことになる。その際、理論的なメリットや先行事例を述べるのみでは強い説得とはならず、逆に、コスト感覚による経済的なメリット、さらには法律上の可否を伴うテクニカルな懸念への対応等が極めて重要となる。教育のアウトソーシングに関する分野とは、極めて学際的かつ、実用的な研究分野であることを改めて認識することができた。 本研究が取り上げた教育のアウトソーシングは、今後ICT技術が一層教育の分野に導入され、反転授業や成果の世界発信など、新たな教育手法が導入されればされる程、現場の教員の仕事量の問題等からこうしたアウトソーシングは考えざるを得ないだろう。しかしながら教育を聖域とみなす教員の感情的な問題は理論を超えたところで根強く存在し、理論と実践の「橋渡し」には十分な配慮が無ければ痼を残したままの導入となり、無用な対立を招きかねない。本研究は一つの問題提起として一定の役割を果たせたとは思うが、今後の多方面からの研究が盛んとなることが不可欠であることは明白であり、成果を引き継ぎ、深化させていただきたいと切に願う。 なお本研究で特に不十分であると感じたことは、当事者の感情的な問題へのアプローチである。より多くの人からヒアリングをし、意味空間を明らかにするべきであった。今後の研究の課題としたい。
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