研究課題/領域番号 |
26370754
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
徳永 美紀 福岡大学, 言語教育研究センター, 講師 (30461479)
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研究分担者 |
林 幸代 福岡大学, 言語教育研究センター, 講師 (00609464)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本人大学生の英語力 / 明示的・暗示的知識 / 文法性判断テスト / ラッシュ分析 |
研究実績の概要 |
26年度はまず20の文法項目に関する時間制限有と時間制限無の文法性判断テストを作成し、260名を対象に実施した。問題プールとして各文法項目に対して非文法的な文を2種類、11項目に対して文法的な文を2種類の合計68問を準備し、共通項目を含む37問のテストを4バージョン作成した。時間制限有と無テストは異なるバージョンを受験するよう設定し、期間を2週間以上空けて実施した。対象者は時間制限有と無のそれぞれ1バージョンを受験し、共通項目を使用して4バージョンのデータを等価し、Winstepsを使用して分析を行った。 結果、時間制限の有無による有意差は認められなかったが、文法的文と非文法的文の結果に有意差が確認された。さらに、対象文法項目の中に難易度の低すぎる項目と高すぎる項目があったことや、問題文やその訳が混乱を起こしたと考えられる問題が確認され、文法項目を15に絞り、いくつかの問題文を変更した。 26年度の後半は、変更を加えた15の文法項目に対する時間制限無の文法性判断テストと短文英訳テストを約200名の学生を対象に実施した。短文英訳テストは文法性判断テストと同じ問題プールから選択した12問から成る4バージョンを作成し、対象者は受検した文法性判断テストと違うバージョンの短文英訳テストを受験した。結果、対象文法項目以外の間違いをどう扱うべきかという問題が生じた。 これらの結果を踏まえ、27年度に実施する文法性判断テストおよび短文英訳テストを、それぞれ共通項目を含む4バージョン作成した。文法性判断テストは時間制限無バージョンのみ実施することとし、上記の15項目の問題文に変更を加えた。短文英訳テストにおいては、対象文法項目の重複する問題文はそれぞれの項目に対して採点できるような配点形式に変更した。文法性判断テストは各バージョン26問、短文英訳テストは各バージョン14問とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パイロットテストの結果、対象文法項目の中に難易度の低すぎる項目と高すぎる項目があったことや、文法性判断テストにおいて英文の問題文やその訳が混乱を起こしたと考えられる問題が確認されたことで、文法項目を絞り、いくつかの問題文を変更する必要性が生じた。さらに、短文英訳テストで文法性判断テストと同じ問題文を使用するにおいて、各問題文における対象文法項目以外の間違いをどう採点するかという問題が明らかになった。その結果、文法性判断テストと短文英訳テストの修正を先に行ったことで、口頭テストの作成と実施が延期となった。しかし、これらの問題点が早期に発見、修正できたことで、27年度の本テストの作成が順調に進むと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、15の文法項目に関して、パイロットテストの結果を参考に改定した本テストを実施していく。 まずテスト対象者のこれまでの英語学習や留学経験などに関するアンケートを実施した。これは、26年度の学会発表において、出席者から指摘を受けたことから、当初の計画に加えたものである。今後、文法性判断テスト、短文英訳テスト(筆記)、および文法知識テストを約500名を対象に実施し、約50名を対象に短文英訳テスト(口頭)とPicture Description(筆記および口頭)を実施していく予定である。文法性判断テストは、パイロットテストにおける時間制限による有意差が無いとの結果から、時間制限無バージョンのみ実施する。それぞれ共通項目を含む26問のテストを4バージョン作成した。短文英訳テストは、結果の比較の為に文法性判断テストから抜粋した問題文を使用し、共通項目を含む14問のテストを4バージョン作成した。対象文法項目の重複する問題文は、それぞれの項目に対して採点できるような配点形式に変更した。口頭の短文英訳テストは筆記と同じテストを使用する。さらに、26年度のパイロットテストにおいて、文法性判断テストと短文英訳テストだけでは文法をどれだけ明示的に理解しているのかに関して疑問が生じる項目もみうけられたため、新たに文法知識テストを作成した。今後、上記のテストに含まれる15の文法項目を導き出せるようなイラストを作成し、筆記および口頭のPicture Descriptionテスト実施する。 27年度の前期終了後、上記のテスト結果の分析を行い、後期には成果発表を開始する。11月にニュージーランドのオークランド大学で開催されるLanguage,Education and Diversity Conferenceでの発表が決定している。 28年度は主に成果発表および論文執筆を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
二種類の文法性判断テスト及び短文英訳テストのパイロットを実施し、データを分析した結果、テスト項目やテスト形式に変更を加えた方が良いということが判明した。その為、当初同じ項目を使って実施する予定であった口頭の短文英訳テストと口頭および筆記のPicture Descriptionテストの作成および実施を見送った。結果、それらのテストで使用予定であったICレコーダーなどの購入費、イラストの依頼費、対面テスト協力者への謝礼金などが未使用となっている。 さらに、例年東京で行われる日本言語テスト学会が京都で実施されたことにより、研究分担者を含めた二名分の旅費の合計が計画よりも8万円ほど安価であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、実施を見送ったテストを実施する為に、イラスト依頼費、謝金、ICレコーダーの購入などに使用する。27年度にニュージーランドで行われる学会での発表が確定している。旅費及び参加費などが当初予定していたシンガポールでの学会よりも高額になることが予測されるため、26年度の旅費の未使用分で充填する。
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