本研究は、日本と韓国の仏教関係資料の検討を通して、7世紀から14世紀に至る時期における、東アジア諸地域の境界意識の変遷と、仏教をはじめとする信仰との関わりについて考察した。古代・中世の東アジア世界では、さまざまな地域にさまざまな「国家」が興亡するが、そこでは、現実の政治課題や外交問題と深く関わって「境界」が意識され、境界の外の世界を意識したさまざまな信仰が行われていた。とくに、日本、朝鮮半島、中国の各境界地域には、同時期に四天王信仰や毘沙門天信仰が広まっており、それが境界意識と分かちがたく結びついてることが明らかになった。
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