研究課題/領域番号 |
26370760
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
工藤 晶人 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (40513156)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地中海 / 法社会史 / 植民地 / フランス / アルジェリア |
研究実績の概要 |
本研究は、地中海史の枠組みを再考するための方法として植民地法の多元性に着目する。本年度は、基礎的な知見をさらに得ることが必要との判断から、アルジェリア植民地法について研究を進めた。とくに、アルジェ大学教授であった法学者マルセル・モランによる「ムスリム・アルジェリア法」法典化の計画について検討した。同計画が19世紀のフランス人によるイスラーム法学研究、東洋学の成果を一部継承しつつ、また一部を却下しつつ学説の整理が行われたことを明らかにした。また、同計画は未完に終わったにもかかわらず、それ以降の法学者、実務者に一定の影響をあたえたことが明確になった。 一方で本年度に生じた新たな課題として、研究の前提となる地中海史という枠組みについての理論的考察がある。ブローデルの大著『フェリペ2世時代の地中海と地中海世界』の出版以来半世紀以上をへて、近年、地中海史という分野、枠組みについての再検討の気運が高まっている。そうした研究の諸潮流を検討し、近代の文化交渉、社会制度の移転といった課題がなおも研究上の盲点となっていることを確認した。そのうえで、本研究のアプローチを地中海史の刷新という文脈のなかに位置づける展望を開くための検討をつづけた。 また本年度は、土地制度の研究から派生して農業史の分野についても関心を広げた。その一つのこころみとして、アルジェリアと南アフリカの植民地体制とブドウ栽培を長い時間軸のなかで比較考察し、アフリカ史の新しい見方をしめすことに一定の貢献ができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年度目にあたる本年度は、理論的側面についての検討を順調に進めただけでなく、派生する分野(土地制度、農業史)についても一定の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降、他地域との比較を本格的に推進し、西地中海と東地中海とを結ぶ新たな視点の提示につながる研究をめざしていきたいと考えている。また、地中海史の方法論についても第一年度、第二年度に蓄積した成果をふまえて提言をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、準備状況に鑑みて予定した海外出張を来年度に遅らせた一方で、新たな課題として生じた地中海史全般の理論に関する考察を深めるための資料代が予定よりも多く生じた。以上のことから前年と同様約13万円の繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、おもに海外出張のための費用として使用することを予定している。
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