研究課題
本研究は、日本古代に所在した諸典籍について、10世紀末以前の史資料を対象として原本の請来とその保管・貸借・書写・流布の実態を悉皆的に蒐集・整理・データ公開していく。それを踏まえ、東アジア世界の中での日本古代の知識・思想の構造的特徴や、列島内での仏教を軸とした思想の伝播と統合の過程を解明することを目的とする。研究期間最終年度である本年度の成果は以下の通り。1.研究総括のための研究代表者・分担者との打ち合わせ、および成果報告のための研究会を開催し、それぞれが成果を報告した(2016年10月30日)。2.9世紀の入唐僧らが作成した「入唐八家請来典籍目録」(ただし宗叡の目録を除く)と、9世紀末~10世紀に作成された「安然録(八家秘録)」掲載の諸典籍のデータベースをエクセルで作成した。またそれら両者の掲載典籍と「五宗禄」および正倉院文書の「南都六宗布施勘定帳」に掲載された典籍群との相互関係(重複・掲載・未掲載)を検討し、請来典籍の特徴を把握した。その結果、八家のうち、空海・円仁・円珍・円行らの将来典籍は、密教典籍が大きな比重を持ったが、他方、最澄の天台典籍請来の他、常暁・円仁・円珍についても、奈良時代以来および未請来の顕教典籍を多数請来していたことが確認できた。あわせて8-10世紀の寺院資財帳群にみえる典籍のデータベースも作成し、寺院での典籍の所蔵状況を大枠的に捉えた。仏典以外の将来典籍(漢籍)のうち、六国史に書名がうかがえるものについてもデータ化を進めた。なおこれらのデータベースの公開準備を進めている。3.研究代表者および分担者はそれぞれ関連する学術論文・報告をまとめた。また研究代表者は関連する学術講演も2回実施し、中央由来の仏教思想の地方伝播と受容およびそれに伴う思想の変容に関する、越後・佐渡を対象とした事例研究を進めた。
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