湯田中温泉よろづや所蔵「唐獅子図屏風」は、狩野永徳筆の御物本を18世紀後半に狩野典信・惟信親子が忠実に模写したもので、今回、はじめて調査・撮影を実施した。額装打ちつけの現状から、写真撮影と画像処理はやや大がかりなものとなったが、近世狩野派による唐獅子図の模写、龍虎図の展開を考える上で貴重なデータとなった。 東京藝術大学所蔵「探幽縮図」所収「聚楽第行幸図屏風」の熟覧・撮影を行なった。行幸後ほどなくしてつくられた本図は、実際の行列(『聚楽行幸記』)に改変を加えて豊臣秀吉・秀次とその親族筋の大名、直臣たちを強調して描き、後陽成天皇の鳳輦と秀吉の牛車との対表現を通して豊臣政権の栄華を賛美する目的で制作されたものであることを明らかにした。 そのほか、毛利博物館より唐獅子図屏風関係史料の写真入手、国会図書館・早稲田大学図書館にて資料収集を行なった。 『豊臣御数寄屋記録』所載の足利尊氏甲冑騎馬肖像画について、中島圭一編『十四世紀の歴史学』(高志書院)に論文を掲載した。そのほかの成果を、『天皇の美術史』3(高岸輝氏と共著書、吉川弘文館 2017年4月刊行予定)の第2章「天皇と天下人の美術戦略」にまとめた。勿来関図や牛若丸図など、そのほかの作品についても、今後、研究・史料紹介を公表してゆく予定である。なお、金沢市承証寺・高岸寺・個人宅に所蔵される龍虎図板戸絵等の調査を実施し、一部を『日本海域研究』48号に史料紹介として掲載した。また『里山という物語』(結城正美氏と共編著)を編集、刊行予定である。
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