研究課題
国造制と伴造制は7 世紀以前における大和王権の地方支配の中核をなす制度であり、大和王権の権力構造および古代国家の成立過程を解明するために不可欠な研究テーマである。従来は国造の支配地域に部(ベ)が設置されると、国造は自分の同族を伴造としてその管掌に当たらせたと考えられてきた。しかし、これに該当しないケースも散見されるのであり、両制度の関係はいまだ不明な点が多い。そこで本研究では、最新の研究成果を盛り込んだ新しい史料集・出土文字資料集・文献目録・データベースを作成し、広く研究者や社会に提供するとともに、伴造制の実態解明、および国造制・伴造制の関係解明を足がかりとして、7世紀以前の地方支配制度の全体を見通す包括的な議論を目指す。平成27年度には、(1)「伴造関係史料集」の作成、(2)「伴造関係出土文字資料集」の作成、(3)「伴造関係文献目録」の作成、(4)伴造制の実態の検討、以上の4項目を実施した。このうち(1)・(2)は、平成26年度に収集した伴造の関係記事・出土文字資料合計約1700件の中から、まずは「伴造」「品部」「名代」「御名入部」「子代」「部曲」などの用語に限定して、文書作成・表計算ソフトを用いて入力・整理を行い、史資料の原型となるテキストデータを作成した。(3)は、平成26年度に収集した「部」「伴造」「名代」「子代」「部曲」などに関わる総論的な参考文献185件を、文書作成・表計算ソフトを用いて入力・整理し、文献目録の原型となるテキストデータを作成した。(4)は、研究代表者の勤務する成城大学において研究会を6回開催して研究成果を報告したほか、論文4本を発表し、学会発表を1回行った。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度には、(1)「伴造関係史料集」の作成、(2)「伴造関係出土文字資料集」の作成、(3)「伴造関係文献目録」の作成、(4)伴造制の実態の検討、以上の4項目を実施した。このうち(1)・(2)は、「伴造」「品部」「名代」「御名入部」「子代」「部曲」などの用語を中心に、史資料の原型となるテキストデータを作成した。(3)は、平成26年度に収集した参考文献をもとに、文献目録の原型となるテキストデータを作成した。(4)は、研究代表者の勤務する成城大学において研究会を6回開催して研究成果を報告したほか、論文4本を発表し、学会発表を1回行った。以上のことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
平成28年度は、(A)「国造・伴造研究支援データベース」の作成、(B)国造制と伴造制の関係の解明、以上の2項目を実施する。(A)では、平成26・27年度に収集整理した伴造の関係記事・出土文字資料合計約1700件、および平成27年度に作成した「伴造関係史料集」・「伴造関係出土文字資料集」・「伴造関係文献目録」を再編集し、既に公開中の「国造研究支援データベース」を増補する形で、「国造・伴造研究支援データベース」を構築する予定である。(B)は、本研究の総括に当たる。平成26・27年度に実施した伴造制の実態の検討より得られた知見を基礎とし、「伴造関係史料集」・「伴造関係出土文字資料集」・「伴造関係文献目録」および「国造・伴造研究支援データベース」を活用することで、国造制と伴造制の関係を明らかにする。従来は国造が地方伴造を分出し、その支配領域内に設置された部を管掌したと考えられてきたが、このパターンに該当しない事例も散見する。また、東国の国造には「某部直」を、西国の国造には「凡直」をそれぞれ名乗る地方伴造が多く確認される。こうした国造と地方伴造の関係性や、国造任命された地方伴造氏族の地域的偏差の観点から、国造制・伴造制それぞれの特質を把握し、両者の関係を総体的に解明する予定である。
次年度使用額が生じた理由は、伴造制に関する研究図書・発掘調査報告書等の購入が予定よりも若干少なくなったことによる。また、伴造制に関する記事・出土文字資料の収集件数目標を余裕をもって設定し、その分の作業と時間を成果物の体裁の検討に当てたため、謝金の支出が予定よりも若干少なくなったことによる。
上記使用額ついては、次年度の物品費(研究図書・発掘調査報告書等の購入費)および謝金(伴造制に関する記事・出土文字資料の収集作業に対する謝金)として使用することを計画している。
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日本常民文化紀要
巻: 31 ページ: 37-62