本研究は「古文書の料紙と様式の有機的関連性についての史料学的アプローチ」と題し、主として「様式論」「機能論」といった文字列情報を中心として進んできた従来の伝統的古文書学と、「料紙論」「形態論」をはじめとする非文字列情報を中心として急速に進展しつつある近年の古文書学を有機的に関連させることで、古文書学の新たな飛躍を試みるとともに、古文書学とアーカイヴス学(文書保存学)との対話の可能性を探ることを目的とする。 上記の目的のため、平成28年8月9日~10日には、東京の國學院大學で古文書の調査を実施した。具体的には國學院大學図書館所蔵『久我家文書』のうち48通と『吉田家文書』のうち45通について、熟覧を行うとともに顕微鏡画像等の調査を実施した。 また今回の科研では、最終的な目標として、全国の日本史関係の大学において、古文書学のテキストとして使用することが可能となるような、古文書のカラー図版入りの書籍の刊行を目指しており、既にミネルヴァ書房の了解も得ている。そこで平成28年度は、そのパイロット版としての図録作成を目指し、特に皇學館大学で撮影した高精細画像データの調査と不足分の撮影を行い、平成28年度末には『皇學館大学所蔵の中世文書』という研究成果報告書を作成した。 なおこの報告書は、あくまでもミネルヴァ書房で刊行を予定している「古文書の料紙と様式の有機的関連性」についての古文書学テキストのパイロット版であるため、今後は本書をもとに、より各種の様式・料紙の古文書を掲載したテキスト作成に向けて努力したい。
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