研究課題
本課題研究は本来、2017年度で終了する予定であった。しかし、前近代琉球の政治権力が明・清王朝に貢進した、火薬原料としての硫黄の唯一の産地として、本研究課題にとって必須の調査地である沖縄県・硫黄鳥島の調査が、悪天候等により当初の研究期間内に実施できなかった。そこで、研究期間の延長を申請し、最終年度の2018年度においては、その島の現地調査の実施を主軸として研究を進めた。ただ、2018年度の現地調査では、硫黄鳥島の海岸への上陸には成功したものの、地形の関係で、その島の崖上にある硫黄鉱山跡や集落跡の踏査をおこなうことができなかった。とはいえ、ドローンも駆使した海岸からの景観の観察および浜辺に散在している生活遺物の調査により、硫黄鉱山としての島の歴史の一部を実査することができた。また、チャーター船で島を周回することにより、その島の全体的な景観や硫黄が採掘されていた火口区域をつぶさに観察することもできた。少なくとも歴史・考古学の分野に関しては、硫黄鳥島における学術調査は、20年以上前におこなわれた沖縄県主催のもの以来実施されていない。この点では、海岸部への上陸と島の周回に過ぎないとはいえ、本研究課題に係る今回の調査は、硫黄鳥島の現況に関する最新の情報を提供する調査として、一程度の有用性をもっていると考えられる。以上のような最終年度の硫黄鳥島調査も含め、本課題研究においては、前近代のユーラシアにおける火薬原料の流通史のうちでもとくに、東アジア地域(日本・朝鮮・中国)における日本列島産硫黄の流通状況の解明を主軸として研究を進めていった。そしてその研究成果として、従来ほとんど解明されていなかった、11世紀から16世紀にかけての東アジアおよびユーラシアにおける硫黄流通構造の歴史的変遷や、その流通を担った権力者や商人たちの姿などを、ある程度解明することができたものと思う。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Proceedings of The 1st British-East Asian Conference of Historians, Core and Periphery in British and East Asian Histories
巻: - ページ: 293-302