研究課題/領域番号 |
26370780
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
苅米 一志 就実大学, 人文科学部, 教授 (60334017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国衙 / 寺院 / 神社 / 修法 / 祭祀 / 宗教圏 |
研究実績の概要 |
1.平成27年度は、『広島県史』資料編などの自治体史を総覧して、備後国における国衙の祈祷を行なう筆頭寺院を確定することを方針とした。特に一宮の所在地である福山市、備後国府の所在地である府中市に目星をつけて絞り込みを行なった。前年度と同様に、活字史料が不完全なものについては、博物館・資料館など原本・写真帳の所蔵機関に出向いて、活字との照合を行なっている。東京大学史料編纂所、京都府立総合資料館、九州国立博物館およびその他の地方博物館において、古文書の閲覧と撮影などを行なった。収集の範囲は、中世山陽地域における寺社と荘園に関するものであり、かつて中央・都市の大寺社がその領主の立場にあったことから、対象をこれらに絞った。 2.国府所在地の所属する自治体(府中市)の固定資産税課において、地籍図の閲覧・複写を行ない、現在の都市計画図に地名をプロットした。さらに一宮(吉備津神社)・国衙系寺院の所在地の地籍図を閲覧・複写して同様の作業を行なった。 3・吉備津神社および国衙系寺院の修法・祭祀のうち、主要なものに絞り、参与観察と記録を行なった。これらの作業の他、播磨(兵庫県)から筑前(福岡)にわたる大寺社の祭礼の観察や関連史料の収集も行なっており、具体的には備中吉備津神社、備後沼前神社、同吉備津神社、安芸厳島神社などを訪問・実地に調査している。 結果として、各国には一宮・惣社と関係深い天台寺院の連合が普遍的に観察されることが把握できた。しかし、こうしたおよびそれらについての研究が従来は不十分だったという状況が浮かび上がってきた。これらの成果により、次の研究指針も定まってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地方大寺社の祭礼は、実地に観察してみると、非常に大規模かつ複雑であり、複数回の参与観察が必要となることが判明している。対象とする国々について、史料収集の面では順調に進展しているが、祭祀・修法の観察や記録という面では、今後も時間的に不十分な面が出てくることが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主として備中国を対象とした作業を行なう。 1.『岡山県古文書集』『吉備津神社文書』を総覧し、備中国における国衙の祈祷を行なう筆頭寺院を確定する。特に一宮の所在地である岡山市、備中国府の所在地である総社市に目星をつけて絞り込みを行なう。前年度と同様に、活字史料が不完全なものについては、博物館・資料館など原本・写真帳の所蔵機関に出向いて、活字との照合を行なう。 2.国府所在地の所属する自治体(総社市)の固定資産税課において、地籍図の閲覧・複写を行ない、現在の都市計画図に地名をプロットしていく。さらに一宮(吉備津神社) ・国衙系寺院の所在地の地籍図を閲覧・複写して同様の作業を行なう。 3.吉備津神社および国衙系寺院の修法・祭祀のうち、主要なものに絞り、参与観察と記録を行なう。また、①の作業から得られた情報をもとに、他の寺社において同様の修法・祭祀が行なわれている場合は、そこにおいても同様の作業を行なう。以上の他、前年度までの進展に不備が見られる点、研究途上で課題がのぼってきた点についても点検を行ない、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
校務およびその他の研究との兼ね合いで、特に現地調査に複数日の日程を取ることが難しく、この点で旅費などが積み残し・繰り越しとなっている。また物品費についても、予定した物よりも安価な商品が増えたことから、同様の状況となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに早期からの予算執行を心がけており、また夏季休業中を利用した複数日の現地調査の予定を組むこと、円滑な作業を促進するためのソフトの導入によって、予算執行を充足させていく。
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