研究課題/領域番号 |
26370782
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研究機関 | 活水女子大学 |
研究代表者 |
細井 浩志 活水女子大学, 文学部, 教授 (30263990)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 亀卜 / 日時選定 / 日本書紀 |
研究実績の概要 |
『日本書紀』及び他の国史の時間論的研究を行う本事業において、平成27年度は、成立期の亀卜についての研究成果の一部を発表した。これは陰陽寮成立以前の倭国にも日を卜する習慣の存在を示す史料があり(『隋書』倭国伝)、伝説的だが『日本書紀』(神功紀仲哀9年3月朔条・9月己卯条)にも該当記事があることを踏まえて実態を解明することが目的である。結果は以下の通り。亀卜成立過程に関する先行研究を整理検討して、次のことが判明した。①倭国大王宮廷に導入された当初の亀卜は律令国家期以降に使用される五兆卜の前の原兆卜である可能性が高い。②従来は卜甲をウミガメから作るため、海民によって大陸より島嶼部である対馬・壱岐に亀卜が自然伝播したとする見解が通説であった。しかし対馬・壱岐でのウミガメに関する習俗と捕獲の難易度を考慮すれば、自然伝播は考えがたく、むしろ倭ヤマト王権により、軍事技術として導入されたとする説が正しいと考えられる。③倭国大王宮廷の儀式における亀卜の導入は、亀甲確保の困難さから律令国家成立に近い時期まで下ると考えられる。④朝廷儀式における合・不合を占う方法は、亀卜そのものより以前の骨卜の方が適合的と考えられる。以上より、日の吉凶そのものを占う習俗自体は、必ずしも亀卜伝来にともない開始されたと考える必要がないことが判明した(暦さえあれば可能)。一方で、日時により複雑に吉凶を占う陰陽寮諸学の特徴も明瞭となった。また皇學館大学神道博物館で行われた「国史編纂シンポジウム」に、報告者(題名「国史の編纂」)・パネラーとして参加して、国史編纂の全体像を示し、歴史の時間に関する見通しを示した。なおこの内容を修正した、「国史の編纂―『日本書紀』と五国史の比較」を『岩波講座日本歴史21巻史料論』に掲載した。これは本事業による研究の間接的な成果と言うことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は六国史とその周辺資料に限定して調査研究をする予定であった。だが古代の日時選定に関わる陰陽寮の、その隣接技術としての亀卜の成立過程に関して通説と異なる見通しを得ることとなり、その解明とそこから導き出される6―7世紀の倭国における時間観念発達の考察に、やや時間を取られる結果となった。また木簡等における暦日等の資料調査・蒐集については、現在1名を研究協力者として確保して進めている。ただし本事業を行っている研究機関及び近隣において適当な専攻の大学院生等の人材をこれ以上確保できず、また昨年度は研究機関図書館の耐震工事があったため、作業がやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている、古代における暦日を中心とする時間観念に関わる資料蒐集を進めていく。また可能なら韓国木簡にも手を広げる予定である。一方で蒐集資料をもとに六国史(特に『日本書紀』『続日本紀』)の前提となる、古代の時間意識の実態の解明やそれを踏まえての六国史の考察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
木簡等における暦日等の資料調査・蒐集については、現在1名を研究協力者として確保して進めている。ただし本事業を行っている研究機関及び近隣において適当な専攻の大学院生等の人材をこれ以上確保できず、また昨年度は研究機関図書館の耐震工事があったため、作業がやや遅れることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
古代における暦日を中心とする時間観念に関わる資料蒐集をできるだけ早く進めていく。また可能なら韓国木簡の調査を行う予定である。一方で蒐集資料をもとに六国史(特に『日本書紀』『続日本紀』)の前提となる、古代の時間意識の実態の解明やそれを踏まえての六国史の考察を行い、それに必要な付随的調査も行う予定である。
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