研究課題/領域番号 |
26370782
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研究機関 | 活水女子大学 |
研究代表者 |
細井 浩志 活水女子大学, 文学部, 教授 (30263990)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 暦日 / 日本書紀 / 百済 / 疫病 / 天然痘 / チフス |
研究実績の概要 |
『日本書紀』以下の国史の時間論的研究のため、現在、古代の暦日に関するデータの蒐集を行っている。これに基づいて、平成28年度は、29年2月に活水女子大学で開催した「『日本書紀』編纂史」研究会で「『日本書紀』の暦日について」の題名で『日本書紀』の暦日使用状況についての報告を行い、これに関する一定の見通しを示した。また3月に全北大学校韓国科学文明学研究所(大韓民国全州市)で開催された第7回日韓科学史セミナーにおいて、「古代日本の暦・天文の学における百済の影響」の題名で研究報告を行い、律令国家成立以前の倭国の暦に百済が与えた影響と、両国の暦日の運用についての共通性を明らかにした。また発表論文の「疾病と神仏」において、律令国家形成に向かう途上での日本国内の交通網の整備が、疫病の伝播の時間的短縮をもたらし、また大陸からの新知識の受容が、日本における疫病認識を形成したことを明らかにした。このことを背景に、陰陽師が疫神祭祀者としての地位を卜部から引き継ぐようになった契機を明らかにした。平安時代の陰陽師は日時に基づく吉凶を判断する。よって陰陽師の職能の発展は、日本における時間意識の展開と密接な関係を持つのである。またこの論文の論証過程で、律令国家に深刻な影響を与えた天平9年(737)の疫病が、通説の天然痘や麻疹ではなく、腸チフスの可能性が高いこと、また慶雲2年(705)~4年の疫病は天然痘であり、これが平城京遷都の主要因であった可能性などを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
暦日の調査・入力に関して、研究機関所在地の事情で必要な人員を十分確保できなかったこと、また2016年4月より研究代表者が初めて文学部長となり、校務繁忙のため予想以上に研究時間の確保できなかったことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
新たに調査等の協力ができる人員を確保し、調査をできるだけ速やかに実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2016年4月より初めて文学部長となり、当職ならびに兼任する委員等の校務が増えたため、研究時間が予想以上に確保できなかった。またデータの調査・整理をアルバイト1名を使って行ったが、該当データが膨大であることと、依頼を受けた担当者自身の多忙もあり予定通り完了しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在の職務にもある程度慣れたので、研究時間の確保をする。また調査・整理を依頼するアルバイトを、適当な人員が得られにくい長崎に限らず、大学院大学所在地にまで広げて確保し、必要に応じて数を増やし、速やかに調査を進めてその結果を検討する。
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