本研究課題「中世から近世における神仏習合の新研究-八幡宮寺の神事と仏事-」に関する調査・研究における平成26年度の進捗状況はきわめて良好であった。申請書に表記した「研究の目的」および「研究実施計画」に鑑み、その成果実績を記述する。まずその1は、石清水八幡宮に、研究代表者および研究協力員と実際に訪問し、近世における石清水祭祀の未整理史料を撮影、蒐集することができた点にある。とくに近世に再興された放生会や安居会の具体的な儀礼を復元できる貴重な価値を有する史料を発掘することができた。ついでその2は、同じく研究代表者と研究協力員とともに、東大寺図書館および手向山八幡宮にうかがい、史料調査を実施した点において成果があった。とくに転害会に関する、戦国末期から近世初頭にかかる新出史料を発見できたことは、今後の研究を発展させる基盤史料となる重要な成果であった。また東大寺と八幡宮での祭祀史料の所在確認が把握できたことは有意義であった。さらにその3は、研究代表者は東寺宝物館の史料担当者と面談し、東寺八幡宮の祭祀にかかわる未翻刻史料について所在を究明することができた点が重要である。仏事に関連する史料の翻刻は行われているけれでも、僧侶による神事については調査が及んでいなかった。東寺文書の再調査を実施し、今後の研究対象となる史料を蒐集できる段階に入った。今後、平成27年度、28年度においては、それぞれの寺社における仏事と神事の役割分担と、その祭祀機能について、調査・研究を推進していく予定である。そして、中世から近世にかけての神仏習合の実態について、祭祀儀礼の面から新見解を報告することを課題とし、究明したいと考えている。
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