平成28年度の研究成果は、本課題の最終年度に対応した総括的な研究にある。平成26年度は基盤研究として、京都の石清水八幡宮寺、東大寺の鎮守八幡宮(現在の手向山八幡宮)、東寺境内の八幡社の三社について、中世から近世における神仏習合儀礼(神前読経をはじめとする仏神事など)に関する史料を蒐集してデータベース(主に史料目録)を蓄積した。平成27年度は、同じくデータベースの構築作業を推進するとともに、発展的な研究と位置づけ、関連する研究に参考となる著作や論文を集積し、研究会を催して、中世に創造され近世に地域社会へと浸透した八幡信仰にかかわる八幡宮寺の神仏習合祭祀の実態を調査・研究した。かかる基盤研究および発展的な研究を前提に、平成28年度の総括的な研究が実施され、研究成果をあげることができた。具体的には、第一に石清水八幡宮寺の調査・研究がある。とくに本課題の成果の一つとして、拙稿「石清水八幡宮の牛玉宝印に関する一考察」(『東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報』8号、2017年6月)が発表される。中世から近世において頒布された護符である八幡宮牛玉宝印に関し、はじめて本格的に究明した論考である。文献と現存する版木・宝珠を総合的に研究し、神仏習合の実態を明らかにした。第二には、東大寺の鎮守八幡宮に関する研究がある。とくに研究の立ち遅れている近世の鎮守八幡宮について、「年中行事記」を中心に仏神事を復元できた。年度内に研究協力者による論文が発表される予定である。第三には、東寺八幡宮の調査・研究の成果がある。南北朝期から戦国・織豊期にいたる「東寺執行日記」に表記された八幡宮関係史料の蒐集、目録化と、東京大学史料編纂所架蔵「阿刀文書」に散見される八幡宮関係史料を蒐集し、目録化した。ともに先行の調査・研究はなく、目録データベースの構築は、関連研究を支援できるものと確信している。
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