輪島市及び鳳珠郡能登町に分布する真言宗町野結衆寺院が所蔵する資料や仏像・仏具・墓石などを中心に、採寸・写真撮影・銘文の記録などの調査を実施し、各寺院の歴史や僧侶・所蔵資料の基本的データ収集を実施すると共に、各寺院の資料整理・保存を実施した。 調査対象の寺院は、町野結衆寺院13カ寺の内、輪島市の髙清寺・西光寺・岩倉寺・永林寺・八幡寺・金蔵寺・天王寺、能登町の本両寺・平等寺(安養寺分含む)・長福寺の10カ寺となった。調査期間はのべ73日間で、3、900点余りの資料調査を実施し、目録化した。また、こうした資料調査を通して得た僧侶の情報も五十音順に配列し、寺院・僧位・没年・出自・典拠・奥書銘文などと共にまとめ、近世以降の奥能登を中心とする真言宗僧侶のデータベースを作成した。 これらの調査の経過や得た知見を所属機関の機関誌に掲載し、学会等で発表すると共に、最終年度には公開シンポジウムを実施し、報告4本、パネルディスカッションを通して各寺院の関係者、檀信徒の方々、地域の方々、研究機関・研究者の方々のご意見を頂いた。こうした活動により、町野結衆の成立状況、町野結衆寺院が実施する法会の概要と変遷、各寺院の歴史、町野結衆を中心とする奥能登の真言宗僧侶の活動と動向、町野結衆寺院における資料保存の状況、奥能登における寺院の信仰圏などについて、現段階での見解を示すことができた。3年間に実施した調査の概要や集積した所蔵資料・僧侶のデータ、研究成果については「報告書」(全337頁)を作成し、関係の寺院や地域の図書館・研究機関・研究者等に配付することにより広く公開し、研究の深化を図ることとした。 3年間の調査では、西光寺・金蔵寺の調査が未完、髙田寺・法華寺・佐野寺が未調査、流失し図書館などに収蔵されている資料の追跡調査、奥能登の他の結衆寺院との比較検討などの課題が残っており、調査・研究の継続が必要とされる。
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