研究課題/領域番号 |
26370785
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
松川 博一 九州歴史資料館, その他部局等, 研究員 (40446886)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大宰府 / 大野城 / 四王寺山 / 木簡 |
研究実績の概要 |
研究計画の第2年度となる平成27年度は、出土文字史料をはじめとした考古資料の集約を主要な作業とした。具体的には①出土文字史料の集成・調査、②特殊遺物・遺構の集成・調査、③平城京・平安京との比較研究である。 ①については、昨年度すでに木簡や墨書土器を中心に先行して進めており、平成27年度も引き続き、研究協力者の酒井芳司氏とともに当館の赤外線スキャナを活用して調査を実施した。その成果の一部は『大宰府政庁周辺官衙跡』や『木簡研究』において発表している。これに加えて西海道出土の印章および施印土器の集成も行った。また、西海道出土木簡の特徴を検討する上の対照資料として、酒井氏と共同して隣国である長門鋳銭司跡・長登銅山跡・周防国府跡出土の木簡を赤外線カメラを持ち込み実見調査を実施した。 ②特殊遺物・遺構の集成・調査については、大宰府条坊跡出土品はもとより、とりわけ防衛都市を構成する水城・大野城跡、宗教都市を象徴する観世音寺・四王寺・筑前国分寺跡および経塚からの出土品や遺構を精力的に集成・調査および現地踏査を行った。その成果の一部は平成27年度九州歴史資料館特別展「四王寺山の1350年-大野城から祈りの山へ-」の展示および同図録で社会還元を図った。また、「古代山城に関する研究会」「鞠智城跡特別研究成果報告会」等にも参加し、最新研究成果の情報収集に努めた。 ③については、近年の平城京および平安京をはじめとした都城研究の文献を図書購入を含めて収集し、比較研究に努めた。また、先行して平成28年度の計画であった多賀城をはじめとした東北地域の比較研究にも取り組み、陸奥国の多賀城のみならず、出羽国の秋田城との比較研究を行った。その成果は古代東北研究のエキスパートである国立歴史民俗博物館の三上喜孝氏を招いて当館主催で開催した特別展講演会のなかで研究報告として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成27年度に実施予定であった調査研究項目については、ほぼ完了している。計画段階では、遺物・遺構の集成について遺跡の性格などを考慮することなく一律に行う予定であった。しかし、進めていくなかで大宰府がもつ防衛・宗教・政治・国際都市などの特性ごとに重点的に集成・整理した方が効率的であり、問題意識および研究も深まると実感した。完了していない遺物の集成はあるものの、完了したものについては予定よりはるかに調査・研究の深化が図られた。 他地域との比較研究についていえば、平城京・平安京を対象とした調査・研究は平成28年度にも現地での補足調査を必要とするが、平成27年度のうちに東北地域との比較研究に着手し成果を挙げることができた。調査研究の対象とする遺物や地域によって進度にばらつきや逆転があるが、全体としておおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成28年度は、これまで所蔵機関との調整と適当な調査員の確保が困難なために実施することができなかった地籍図調査をこれまでの文献・絵図・出土資料等の調査研究によって集積された情報に基づいて実施する。結果的にはその方が対象地域も絞られる上、これまでの調査研究による問題意識の深化も図られており、効率よく大きな成果を挙げられると考えている。 あわせて、平城京・平安京および多賀城・秋田城などの比較対象地域の現地調査も行い、引き続き比較研究を進めるとともに、学術交流の基盤づくりに努める。 3年間の調査研究の成果については、平成28年度冬季開催の当館企画展「大宰府の役人と文房具」の展示および同図録、さらには平成30年度開催の当館特別展「大宰府への道―古代都市と交通-」の展示において公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた地籍図調査が所蔵先との調整や依頼を予定していた調査員の転勤などにより、平成28年度に持ち越されたため、それにともないその分の人件費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施できなかった地籍図調査を平成28年度に実施することで、当該人件費等を合算して使用する。
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