研究課題/領域番号 |
26370790
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小林 准士 島根大学, 法文学部, 教授 (80294354)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 法談規制 / 日蓮宗 / 浄土真宗 |
研究実績の概要 |
まず九州地方における浄土真宗の在家法談等の幕藩領主による規制や、神祇不帰依の宗風に関わる争論の調査を行うため、明治大学博物館の内藤家文書や大分県立先哲史料館蔵の史料の閲覧と撮影などを実施した。その結果、18世紀半ば以降、豊後国における延岡藩領の飛び地や幕領、小倉藩領などで法談規制や争論があったことを実際に確認できた。 また、岡山大学附属図書館の池田家文庫の史料調査を行い、宝暦年間に岡山藩領で起きた日蓮宗徒の神社参詣の是非をめぐる、日蓮宗寺院と京都吉田家配下の神職との争論に関わる史料を収集することができた。 これらの調査で確認した史料については、2015年10月に開催された日本史研究会大会近世史部会における報告コメントに際して利用し、近世後期における宗教界の秩序を考察するための事例として取り扱うことができた。これまで研究を進めてきた浄土真宗だけでなく、日蓮宗の事例も検討したことで、神祇信仰をめぐる仏教僧侶と神職の争いが18世紀半ば以降、複数宗派で起こっていたことを明らかにすることができ、また近世における諸教・諸宗派間の秩序を系統的に分析していく足がかりを得ることができた。 また、島根県飯南町の浄土真宗寺院である明眼寺の史料調査を引き続き進めた。概要調査に続き、史料の詳細目録の作成に移るとともに、同寺所蔵の基本史料の撮影を行い、一部については翻刻作業を進めている。さらに、蔵書目録の作成も引き続き行っており、あと少しで完成予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本となる作業である明眼寺文書の調査はおおむね順調に進んでいる。また、予定していた九州方面の史料調査を実施し、重要な史料を閲覧撮影することができた。一方、日蓮宗関係の調査については、当初予定していた島根県内の寺院史料調査はできなかったが、岡山県の関係史料を新たに見出し調査対象とすることが出来た。三業惑乱関係の史料分析については作業がやや遅れているが、来年度で挽回したい。
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今後の研究の推進方策 |
1.島根県飯南町八神の明眼寺文書の蔵書目録及び史料目録の作成をめざし、一部史料については翻刻して公開する。 2.岡山や福山方面の日蓮宗寺院に関わる争論を収集するとともに、島根県内の寺院調査も進める。 3.真宗の異安心事件である三業惑乱に関わる基本史料を分析し、事件の再評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の後半に妻が出産準備に入ったために、出張や史料調査の回数が当初予定よりも少なくなり、旅費や謝金の執行が減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度できなかった史料調査を行い、旅費や調査補助者に対する謝金の支払いに充てる予定である。
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