研究課題/領域番号 |
26370791
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
三宅 紹宣 広島大学, 教育学研究科(研究院), 名誉教授 (10124091)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近世史 / 近代史 / 史料学 / 古文書学 |
研究実績の概要 |
本年度は、山口県下に残存している防長両国の日記の基礎調査と諸日記のデータ入力を実施し、その一部の日記について翻刻して史料紹介を行った。主たる実績は、以下の如くである。 1、「児玉惣兵衛日記」の翻刻。長州藩元治の内戦の研究は、諸隊側の視点から分析したものが中心で、萩側の内情については、ほとんど解明されていない。「児玉惣兵衛日記」は、萩側の動向を克明に記録しており、本日記を翻刻することによって、内戦の多角的研究が可能になった。児玉惣兵衛は、大組士で700石、天保年間から手回組頭、記録所役などを務め、慶応3年隠居した。この間、公用記録、私用記録を多数残し、現在9冊に編綴されている。 日記では、元治元年11月14日、諸隊が絶対恭順の方針に従わない場合について萩政府の対策会議が開催され、諸隊が承服しない場合は、軍勢をもって討ち果たしてでも処置をつけるべきという強硬論が出され、既に多くの同意を得ていることが注目される。さらに12月7日、御前会議において、諸隊が五卿の渡海を妨げる場合は、討ち果たすという強硬論が出され、武力鎮圧方針が固まっている。従来、高杉晋作が12月15日夜決起したため、武力鎮圧方針が出たと誤解されることが多いが、高杉決起以前から、諸隊を討ち果たす方針が決定していたことが解明できた。 2、吉田松陰日録・日記・書簡、木戸孝允文書の入力を行い、諸データベースを作成した。これにより用語検索などが可能となり、今後の研究を推進する基盤を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、「中野半左衛門日記」、「林勇蔵日記」、「柏村日記」、「浦日記」、「内藤万里助造酒公私日乗」、「清水美作日記」、「児玉惣兵衛日記」ほかの史料の撮影と文書の整理を行うことであった。 これらの計画については、史料撮影、解読、翻刻について実施し、ほぼ計画を達成できた。なお、「進藤日記」、「渡辺新日記」については、撮影は未完了であり、最終年度には達成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、以下の如くである。 1、史料撮影と文書解読。「進藤日記」、「渡辺新日記」について史料撮影と文書解読を行い、解読の完了していない「柏村日記」を中心に解読作業を完了させる。 2、分析。解読した内容をもとに分析を進め、データベースを作成し、学会発表を行うとともに、学術雑誌に発表する。さらに、蓄積してきた研究を基にして総合化し、研究成果報告書にまとめる。あわせて研究成果の広報用パンフレットを作成し、広く普及を図る。
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