研究課題/領域番号 |
26370795
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
胡 光 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50612644)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 西の一番札所 / 海の山寺 / 弘法大師信仰の基層 / 真野長者伝説の伝来 |
研究実績の概要 |
四国遍路と言えば、弘法大師の遺蹟を訪ねるものとされ、現在の各札所には必ず大師堂が設けられるなど大師一尊化の傾向が強く表れている。しかし、近世以前の史料を見ると、札所には多様な信仰が存在していたことがわかる。したがって、大師信仰以前の多様な信仰を抽出し、それらがどのようにして大師信仰に一元化されるかを検討することは、未だ明らかでない札所の成立過程を探る上で有効な方法である。本研究は、各札所にある諸資料を総合的に調査することで、こうした課題を達成しようとするものである。 本年度は、愛媛県内の札所調査を中心に行い、調査寺院は45番岩屋寺、51番石手寺、52番太山寺、第65番三角寺及び奥之院仙龍寺であった。なかでも太山寺においては、彫刻・絵画・工芸・民俗という他分野の研究協力者ならびに研究補助員の協力をあおぎながら、17,000点以上の各種資料を確認した。彫刻では、重要文化財の本尊7躯と同じく平安時代末期のものを10躯以上、絵画・工芸品でも中世期の優品を確認した。古文書や建造物落書調査では、これまでの研究が畿内を中心とする遍路研究に偏っていたのに対して、江戸時代中後期に増加する中国・九州地方からの遍路を迎える伊予霊場の姿と西の一番札所的役割を担う太山寺像を抽出した。 さらに、年代の異なる5種の縁起を比較する新たな方法により、信仰の変遷を分析した。三津浜・高浜の湊に近い山中に位置する当寺においては「海の山寺」の特徴が強く現われ、中世期には行基を起源とする山の信仰が記され、江戸時代前期に弘法大師信仰が加わり、江戸時代中期に豊後から真野長者伝説が九州の遍路によってもたらされ海の信仰が加わる。八十八箇所霊場の成立と展開に関わる重要な研究成果を得た。これらの成果は、学内の研究支援を得て、『四国霊場第52番札所太山寺総合調査報告書』として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太山寺調査において、予想を超える17,000点以上の資料が確認されたため、本年度は太山寺調査を中心に行い、調査を完了させた。太山寺以外に、岩屋寺・石手寺・三角寺・仙龍寺の調査も実施できたが、調査完了は次年度以降に持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、香川県内の霊場を中心に調査する予定である。該当寺院は、74番甲山寺・75番善通寺・84番志度寺の調査を行う。これに加えて、石手寺などの伊予霊場の調査も継続する。
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