四国遍路は、弘法大師の遺蹟を訪ねるものとされ、現在の各札所には大師堂が設けられ大師一尊化の傾向が強く表れている。しかし、前近代の史料を見ると、札所には多様な信仰が存在していたことがわかる。そこで、大師信仰以前の多様な信仰を抽出し、それらがどのようにして大師信仰に一元化されるかを検討することは、未だ明らかでない札所の成立過程を探る上で有効な方法である。本研究は、各札所にある諸資料を総合的に調査することで、この課題に接近した。第51番札所石手寺と第52番札所太山寺は総合調査を実施し、報告書を作成した。ほかに、第74番札所甲山寺・第75番札所善通寺・第86番札所志度寺などの古文書の一部を調査した。
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