本研究は、沖縄と台湾において「旧慣」調査を行った田代安定が遺した一次史料に基づいて、両地域の「旧慣」調査の類似点と相違点を考察して特質を明らかにし、「旧慣」調査がいかに沖縄と台湾の統治政策の形成に繋がっていたのかを解明することを目的としている。本研究では、台湾大学所蔵「田代文庫」所収「沖縄関係資料」の全文翻刻を進展させ、特に、国内外に分散所蔵される八重山開拓「植民」論に関する田代の建議案を比較して各種建議書の最終版を確定した。本研究の意義は、沖縄と台湾の田代の「旧慣」調査を比較研究することによって、沖縄の「旧慣」調査が日本の植民地統治政策の形成の原型となったという仮説的結論を得たことにある。
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